第二章 大戦争序章

第一話 プロローグ

聖歴2242年、秋期 終わりの月 ノリスのアパート


 ノリスはふと思った。あと2週間程度で2242年も終わる。もう雪も積もって居るのに、どこが秋なのだろうか、と。春、夏、秋、冬と4つの季節で分けるのは良いが、もう冬でも良いだろうと。そして、もうすぐ街には彼氏、彼女連れがわんさか出回るのだろうと。そんな時期に私の連れは、いつもの腐れ縁でジョシュアだ。そのジョシュアだが、コーラとポテトチップスが入ったビニール袋を片手に、私の部屋にやってきていた。


「なぁ、ノリス。聖王国中近世史特別講義のレポート、進んでるか?」


 ノリスはピンときた。こいつ、絶対に何も手を付けていない。提出期限は来週だぞ?


「それを聞くということは、まだ手を付けてないんだろう?全く。今回のレポート課題は、『大戦争序盤で聖王国が滅亡の危機に瀕した理由を説明せよ。』というものだったな。うちには概説書しかないが、それでも大まかな骨組みくらいは作れるだろう。それでも分からないところを調べていけば、形になるんじゃないか?」

「そうなんだけどよぉ。分からないところを調べるって、どうすりゃいいんだ?」


 ノリスは、やり方自体が分からなかったのかとジョシュアに対して思いつつも説明する。まずは概説書を何冊か読む。もちろん著者が別の本だ。そうして全ての本で矛盾なく共通している部分は、広く歴史の事実として認識されている部分だ。それとは別に、著者自身の意見が食い違うことがある。その部分を、それぞれの著者が引用した文献を読み、確かめ、自分の解釈を史料に矛盾なく述べて行けばよい。たぶん、歴史学の講義で出されるレポート課題とは、史料自体を探す訓練であり、史料から分かった事柄を矛盾なく文章で説明する訓練なのだと思う。そんなことを説明しながら、ノリスは数冊の本を手に取った。


「このあたりの本は、著者も違うし、ちょうど大戦争序盤で帝国が攻めきれなかったころのことについて、意見が異なっている本だ。とりあえずはそれを読んで、気になったところについては、著者が引用している史料に当たれば良い。そして、その史料を読んで気になったことがあったら、またその史料で引用されているところをって流れだな。もちろん、過去の事象のキーワードになる言葉から史料を探しても問題ない。」


 それを聞いたジョシュアは、一週間しかないのにそんなの出来るかよって顔をしている。まぁ、ジョシュアが次に何をいうかは、もう想像がついているが。


「なぁ、ノリス。とりあえず、大戦争序盤の大まかな流れを教えてくれよぉ。」


 ノリスはため息をつきつつ、こいつ、そのためにコーラとポテチ貢物を持ってきたなと思いつつ、ジョシュアに大戦争序盤の流れを語ることにした。

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