53弾 新たな害獣やっつけてみよう
「今回の依頼は、こちらはいかがでしょうか。」
いつも通りに、セイクさんが依頼を示す。
「ふーむ、獣退治ですか。スライコヨーテの退治、バフロッグの退治、それにフレイムウォルフの退治ですか。フレイムウォルフはランクが、確か。」
「はい、猛獣にランクされています。」
「一応確認なんですけど、俺もこのくらいのランクの獣とも戦える、と見られているということですかね。」
「そうですね。依頼完了実績を考慮してということです。」
「ふーん、わかりました。退治の優先度みたいなものはありますか。」
「そうですね、フレイムウォルフが優先になりますね。ついでスライコヨーテ、バフロッグ、というところでしょうか。」
そうか、優先度に従ってみるか。
「これらの依頼を受けても大丈夫でしょうか?」
「まとめて受けるのでしたら、期限は調整します。」
「そうですね、12日以内でよろしいでしょうか。」
「…わかりました、その形で依頼を受けられるということで。」
まとめての退治依頼をこなすことになった。
フレイムウォルフ、ウォルフ種の一つで、魔法属性を持つ種である。このフレイムウォルフは、火属性を持っていて魔法攻撃に耐性があり、水属性魔法しか効かないのだ。ちなみに、このウォルフ種とやらは他にアクアウォルフ、ロックウォルフ、ウィンディウォルフの3種がいる。
(じゃあ、まず偵察をするのね。)
組合本部を出て、街の雑貨屋に向かいながら、メムが念話術で話しかける。
(ええ、メム様の最強の囮、期待しております。)
そう答えると、メムはノリノリになってきたのか、妙なリズムで体を振りながら歩く。
ということで、用心のために毒餌を用意し、魔弾の確認をし、拳銃に装填して偵察のために、ドラキャをレンタルして、退治依頼の各場所へ向かう。
「うーん、なるほどね。」
「何がなるほどなの?」
偵察を全て終えて、俺が思わず発した言葉に、メムが意外そうな顔をする。
「いや、一気に退治を終わらすのがベストだけど、魔弾の種類を考えないと、ということです。メム様。」
「ここの最近の、ダンの魔術研究のテーマでもあるわね。」
「うーん、どう研究するか。」
そう言ってドラキャの操縦に集中する。
偵察を終え、レンタルしたドラキャを返し、組合本部の部屋に戻り、獣退治の準備に取り掛かる。
「空いた時間は、魔弾作りだな。」
「ふーん、準備作業が増えているわね。魔弾を使う以前に比べて。」
「これも課題といえばそうなんですよね。」
そう言いつつ、魔弾作りにかかる。材料は、まあ安定して入手できるようになってきたが。
翌朝、
「結局、昨日は、ほとんどの時間で魔弾作りか………。」
首を回しながら一人呟いてしまう。なんとか寝る時間は確保したが。
「そうね、これは問題よ。私の食事時間も削られてしまうのね。なんか生活がギスギスするー。」
元女神猫が俺の呟きを受けて、なんとも自己中な発言をする。まあ、メムが食事問題で愚痴るのは、なんか定期イベントみたいになってきている。
「まずは、ドラキャをレンタルして、獣退治にかかりましょう。」
「でも、ドラキャのレンタルって、一日限定なのかしら?」
「商売上、まだ俺の信頼が低いのですよ。こうやってレンタルを繰り返し、信頼を積めば、レンタル期間も伸ばせるそうですよ。」
冒険者ランクや商業ランクを上げれば、もっと期間を延ばせるのだが、まだ低ランカーなのでしょうがない。
とはいえ、ドラキャをレンタルして、退治に向かう。
まずは、フレイムウォルフの退治にかかる。
「これが、フレイムウォルフか………。結構デカいな。」
初めてみる獣、猛獣のそれは、なかなかデカい。メムの大きさより1.5倍は大きい。それが2匹道路の隅でたむろしている。
シベリアンハスキー犬を少しキツめにした表情と、何より毛の色が派手な、赤みの強いオレンジ色。ちなみに毛皮は装飾品としての需要があるそうだ。
街から少し離れた地点の道路、木々が繁り、うっそうとしている。その道路付近で人々や商隊を襲ってきたので、退治依頼が来た。
「一応今回、メム様の最強の囮の力をお借りしたく。」
「いいわよ、まあ舐められないようにしてね。」
そう言って、俺が拳銃を握り、メムを先頭に立たせて、じわりじわりとフレイムウォルフに接近する。
ある程度近づいたかなと思った瞬間、ギロリと睨んだ2匹のフレイムウォルフは、一気にメムに飛びかかっていった。
「集中。」
俺が呟き、1匹ずつ狙いを定め、ハンマーを下ろし引き金を引く。1匹につき3発ずつ魔弾を撃ち込む。
ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ、ドシュ。
見事にフレイムウォルフたちに全弾命中し、2匹ともあっさりと倒れてしまう。
「え、今のって。」
そう言って、メムが俺と拳銃を見つめる。
「今の魔弾って、水属性の魔法を発動させたはずだけど、何か違うわね。」
メムは俺が撃って発動させた魔法が、具体的に何なのか気になっているようだ。
「ぶっつけ本番なところはありましたが、うまく行きました。【氷球】の漢字で試してみました。」
「ああ、氷ね。しかし、ぶっつけ本番とは………。」
メムが呆れ気味に言う。
「まあ、水という漢字に点一個足すとできる漢字なので、なんとかなるとは思ってました。」
「ダン、たまにあなた、無茶するわね。発動しなければどうするつもりだったのかしら?」
「一匹はメム様に対応してもらい、もう一匹は俺が対応するつもりでした。時間稼ぎぐらいになれば御の字かなと。」
「まさか、私に全部押し付けるつもりじゃ。」
「そんなことはないですよ。元女神様の威厳で威圧するのも可能かと。」
「………言っとくけど、元女神じゃないわよ。」
あっ、ヤベエ。メムの機嫌が下り坂になりつつあるか。
「とりあえず、こいつら積んで、次の退治に行きましょう。」
そう言って、誤魔化して、フレイムウォルフ2体の死骸を片付けてドラキャに積み込む。
「あれ、これは何だ。」
フレイムウォルフのいた近辺に箱が2つ。この異世界で売られている雑誌くらいの大きさ、前世でのA4よりちょっと大きいくらい、厚さは俺の人差し指くらいの大きさの箱だ。
メムが箱に接近して、匂いを嗅ぎ、
「中に何か入っているみたいね。食い物ではないようだけど。金目のものでもないような。」
中身を分析してみるが、見当がつかないようだ。
「とりあえず、それも持ち帰って受付で確認しましょう。」
そう言って、中身は見ないで箱も積む。そして次の退治先へと進む。
スライコヨーテ6匹は、拳銃を使い、岩球の魔法を発動させて、あっさりと退治する。
その次のバフロッグ5匹は、同様に、火球の魔法を発動させて、あっさりと退治する。
バフロッグはドラキャに積めなくなったので、街の運送屋に運搬を頼むことにして、退治の証拠を採取して、組合本部へ戻ることにする。
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