51弾 後の始末をなんとかしよう

 夕刻にイチノシティに戻ってきて、必要書類を渡し、護衛の依頼完了報告をする。


「今回は、本当にお疲れ様でした。全員無事な状態で依頼を完了したということで。こちらは、ボーナス込みの代金50万クレジットです。」


 セイクさんが、お見事という表情を隠しつつ、代金を渡してくれた。


「あと、大変申し訳ないのですが、明日にでも警備隊総隊長のところへ行っていただきますか。」


 とセイクさんから追加で伝言される。まあ、多分、今回の件だろうな。



 翌日、早速、警備隊本部の警備隊総隊長のところへ向かう。着くとすぐに、総隊長と面会になった。


「ニシキ殿、いろいろやってくれたね、」


 開口一番にそう言われる。


「ご迷惑をかけたようで、申し訳ございません。」


 そう言って詫びると、


「まあ、罪に問われるということではないし、間諜扱いされた意趣返しかい。」


「いいえ、言い訳は一切しません。」


 こっちも結果責任がある気はしていた。


「組合本部長から依頼の話は聞いているよ。いや、外に話すことは決してないよ。墓場まで持って行く話さね。護衛という体だけど、駆け落ちの手伝い依頼とはね。」


「まあ、依頼の割り振りは組合本部、冒険者ギルド側ですから。俺は、その依頼を受けただけに過ぎませんよ。依頼完了のために、手段を選ばなかったかもしれませんが。あと、依頼者たちからお礼みたいなものも、もらいまして。いかがですか、コレなんですけど。」


 そう言って、両学校の長の不正の証拠書類の一部を渡す。


「何だいこれ、………………どえらい証拠だね。」


 一瞥した総隊長が、顔色を変える。


「警備隊総隊長としてはこの手の不正は、なかったことにされますか。」


「いいや、そんなことはないさ。しかし、あいつら、道理で、妙に人をやたらと間諜呼ばわりしていたのかい。…なるほど、これを知っていて、ニシキ殿は依頼を受けたのかい。」


「まさか、そんなことはないですよ。ただ、学校見学しただけで、間諜呼ばわりはひどいと思いましたが。」


「まあいいさ。よし、早速行動に移るか。しかし、ニシキ殿、いい引きをしているね。うちに来ないかい。そこのグランドキャットのメムも込みで雇いたいよ。」


「…その話よりも、この不正問題を片付けたほうがいいのでは。」


「そうだね。まあ、あまり依頼完了のための無茶はしなさんな、ってことだ。今後は気をつけておくれ。」


 ということで、話が終わり、後日、両学校の長は逮捕されることになった。



「ふう、いろいろあり過ぎた依頼だったわね。でも楽しかったわ。」


 組合本部の寮の部屋でくつろぎながら、メムが感想を述べる。


「でも、ダン。どうしたの。渋い顔をしているけど。」


「いえ、依頼は完了しましたが、今回の依頼で思わぬ余波というか、なんというか。」


「何、どうしたの。私は心の広ーい女神よ。言ってご覧なさい。怒らないで聞いてあげるから。」


「本当に怒りませんか?怒らないで聞いてあげるって、基本、俺が怒られるテンプレなセリフの一つなんですけど。………実は、この依頼完了したのですが、結局赤字になりまして。食事も節約モードになりそうです。」


「はあああ、何やってんのよ!。なんでそうなるのよー!。」


 結局、メムは怒ってしまう。赤字の原因は、主に服代。4人の依頼者を変装させる服、囮用に依頼者たちが着ていたのに似た服の代金、計24着分。これが意外と大きかった。あとは、ドラキャを古ぼけさせるための費用や、情報を得たり、噂を撒くために出入りした店での飲食費。


「ということで、食事は質素なものになります。」


「どうせ、残飯食でしょ。いいわよ。わかったわよ。しょうがないわよ。」


「メム様、エコです。フードロスを防ぐエコロジー活動です。」


「何がエコよ、エコロジーよ。これはエコノミーでしょ。」


 ダイエットにもなります、とは言えず………結局1ヶ月間、食費を切り詰めた必死の節約生活となった。



 一騒動以上を起こした依頼を完了させて、貯金があまり増えないことに、頭を悩ませながら商業ギルド依頼や、冒険者ギルド依頼をコツコツこなす。マーハ商店との情報提供もしており、情報料やフラグのパテント料も入っては来ているが、何か新たな物を開発してみるかとも考えてみる。

 マーハ商店の話では、最近では、服の選び方にも変化があったとのことで、


「最近、この街のお客様は、服の裏地も見るようになってきたのですかね。しっかり見てくるのですよ。あとなぜか、服に耳をそばだてる人が増えまして。」


 それを聞いたメムは、体をビクッとさせた後、妙に落ち着きがなかったが、その理由は俺とメムだけが知っている。

 あと、ドラキャの操縦許可証については、両学校の長の逮捕に伴い、しばらく閉鎖となり学校に通えないため、知り合いのコネや伝手を頼り操縦練習をし、なんとか運輸協会の試験に受かり、操縦許可証をゲットしたのだった。



「フィー、とりあえず本日の魔術研究は、終わり。」


「結局、新たな魔法は発動しなかったわね………。」


 今回は、新たな文字で、魔法が発動するかの実験をしている。操縦許可証をゲットするとドラキャのレンタルができるので、行動範囲は広くなりそうだ。ということで、カリメーアの森へと進出している。プラス俺のドラキャの操縦実践も兼ねているのだが。


「何か漢字一文字と、球、の感じで、なんでも書けばいけるってわけでもないな。」


「でも種類が増えるのは、いいことなのでしょ。ダンにも私にも。」


「いや、メリットよりデメリットの方が大きいかもしれません。」


 メムにより魔弾と命名したものを、拳銃に弾込めして、魔法の発動させるのはいいとしても、魔法の種類の増加は、魔弾の種類の増加になる。魔弾がどんな魔法を発動させるかをわかるようにしないと、弾込めの際に誤って込めてしまい、発動させる魔法が違うものになった、という事になりかねない。


「魔弾の管理と、整理についても難点がありますし、この拳銃により発動させるにしても、メリット、デメリット双方大きいですね。」


「むー、どういうこと?」


 メムが、クエスチョンマークを表情に出しながら尋ねる。


「メリットは、発動開始が速い、おそらくこの異世界の大体の魔法使いよりも速いでしょう。先手を取れるし、機先を制することができる。デメリットは、発動にアドリブが効かない。戦闘中に、魔術を使う流れの変化に対応が遅れる。というところです。」


「ということは、この魔弾を入れ替えればいいのじゃないの?」


「魔弾を入れ替えるにしても、アクションを止めて、弾倉をだし、中身を確認し、発動させるのにベストの魔弾を選び、使わなくなった魔弾と入れ替える。魔弾を選ぶためにこの弾入れから、探して選び出し、入れ替える。使わなかった魔弾を戻す。かなり、止まっている時間が長いと思いませんか。」


「あ………。確かに、そっかー。」


 メムは、説明を聞いて、ようやく納得した表情になる。


「使わなかった魔弾を、放棄してもいいのですが、そうしても、アクションを止める時間は長くなるでしょう。その間メム様単騎で暴れてくれれば、言う事なしですが。」


「うーん、それは厳しいわね。やっぱり、私たちだけだと苦しくなるかしら。パーティメンバーを入れる必要があるのかもね。」


苦渋に満ちた表情でメムがうめくように言う。


「ただ、私たちのことを説明して、理解した上で組んでくれるかどうかよね。やっぱりダン、あなたが覚醒して、100人分ぐらいの働きを見せるとかすれば、問題ないのよ。」


「メム様、結論がそれはあまりに過酷というか………」


「ダン、気合いよ、気合い。」


 まるでブラック企業の上司だな、こりゃ。


「とりあえず、街に戻って、ドラキャを返した後は、茶店に行って、昼飯兼スイーツというのはいかがでしょうか。」


 予定よりも早く研究が終わってしまったのもあるので、たまにはスイーツで、メムの機嫌取り及び変なことを考えないように、釘を刺す事にする。


「そうね、悪くない話じゃないの。」


 メムは乗ってきた。

 ドラキャを操縦して街に戻り、返却を済ませて、よく行く茶店のノンブリへ。最近もちょくちょく行くのだが、休業が4割、営業中6割と言ったところか。

 今回は営業していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る