40弾 戦い方のヒントを探してみよう
バーバリーエイプとは、俺がこの異世界に来た際に、ファイティングエイプと手合わせさせられ、その後話をしようとしたところに襲撃をかまして、ファイティングエイプに逆撃を喰らった獣だったことは覚えている。確か黄茶色の毛皮をまとっていたな。
そう思いだしているうちに、
「どうやら、我々が優勢らしい。しかし、我が分隊が動くのはこれからと思えよ。」
そう言って、副分隊長が分隊内に声をかけて回る。
しかし、街の高塔から、大きめのフラグが振られ、分隊内に緊迫感が走る。
「どうやら、一部のバーバリーエイプが裏手にまわったようです。正門側での襲撃は、こっちが優勢なのは変わらないですが…。」
ローウェル隊員が説明してくれる。
「裏門には誰もいないと言うことかな?」
俺が聞いてみると、
「誰もいないことはないですが…、正門に襲ってくる数がいることを見越して、そちらに警備隊員と冒険者を多く差し向けたので。裏門がやや手薄かもしれません。」
ローウェル隊員がそう答えるとともに、
「しまった、第2裏門を一部が突破しました。」
との声が上がり、城壁の上から、棍棒を持ったバーバリーエイプが3匹、俺たちの目の前に飛び降りてきて、メムを凝視する。メムは威嚇するように、3匹を睨み返す。
ただ、降りてきたところは、第十警備分隊のいる所、バーバリーエイプはたちまち、警備隊員らに包囲される。
(メム様、狙われているかもしれません。ご用心を。)
(わかっているわ、こっちをガン見してくれちゃってるもの。)
念話術で会話をしたその時、1匹が、メムに襲いかかってきた。もう1匹も少し遅れてメムに襲いかかる。
「集中」
俺は呟き、ショートソードを抜いて、相手を見る。動きがゆっくりに見えるとともに、メムに気を取られている隙をつき、喉元へ剣を突き入れる。相手の右喉にカウンター気味に剣が刺さり、血が吹き出して視界を遮る。そして、俺たちも相手の出血を浴び、動きに怯みが出てくる。
やむを得ない、俺は剣を手放し、もう1匹に対応すべく拳を握り、ガードの構えをしながらもう1匹の動きに合わせて接近すると、そのもう1匹の背後から炎が浴びせられると、ギャーと言う悲鳴をあげて黒焦げになり、ズシリと崩れ落ちる。と同時に、俺が剣を刺したままの1匹も倒れたのだった。
3匹目はと思って周りを見ると、最後の1匹が第十警備分隊員たちに槍で四方から刺されて崩れ落ちていた。
「急とはいえ、いい動きでしたね。
ガーラン分隊長が、そう言いながら短杖をしまう。
「あの炎は、分隊長殿が放ったのですか。」
俺が尋ねる。
「ええ、怪我明けで久しぶりに動きましたが、我ながら上手く討てました。」
そう答えてくれた。
どうやら、周りの戦闘は終結に向かっているようであった。勝鬨の声があちこちで上がっている。
「油断するなよ、後方支援の仕事はこれからだぞ。」
副分隊長が気合を入れる。
結局、
「お疲れ様でした。今回の緊急事態の対応料金になります。ボーナスが加算されますので、合計40万クレジットになります。」
受付で、セイクさんに報告したら、街中に入り込んだバーバリーエイプを退治した分と、後方支援の4日分の臨時仕事代分がボーナスとして加算されたのだった。
でも今回の緊急事態対応依頼で儲かったかというと、正直、収支トントンになるのだった。なぜなら、返り血を浴びた服に匂いがついてしまい、匂いが取れなくて処分したことと、軽鎧の汚れが落ちにくく、中古だったこともあって、破損もひどくなり、修理代よりも新調の方が安いこともわかり、今の軽鎧は手放して、金属部分は再利用のため溶かして別のものにすることとなった。新たに軽鎧は購入したのだが、俺の体に馴染むには少し時間はいるだろう。新調した服代と軽鎧代で、計37万クレジットかかったのだ……………。
「新品の購入はこんなにかかるのね。あなたが、装備に最初中古品を選んだ理由が分かったわ。」
メムが部屋でため息をつく。
「やっぱり魔法が使えれば、返り血を浴びずに戦えるのは大きいですね。あの分隊長の魔法は見事だし、参考になった。」
俺は、新たな魔法の使い方を見つけた気がした。
魔法の使い方を見つけたとしても、魔術研究の際の問題点は解消されたわけではなく、魔伝紙による紙製薬莢はコストがかかる問題をどうするかを考えながら、購入した武具店に行って、軽鎧の調整をしてもらう。その時に、武具屋の主人から、装飾をつける気はないか聞かれ、装飾屋を紹介してもらう。鎧に装飾をつけることで、より自分の物であることを証明できることや、装飾品によっては、様々な付加効果を与えることができるそうだ。
早速、武具屋から紹介された装飾屋へ行く。
「ごめん下さーい。と、ちょっと忙しそうですね。」
装飾屋は、店内の整理整頓と掃除をしていた。
「ごめんな、今ちょっと散らかっていて。仕事も立て込んでしまってな。」
と店主は言いながら、紙の束をまとめてる。その紙は、薄い和紙のようなものであったが、少しくたびれた感じもする。
「もしかしてその紙は、捨てるのですか?」
俺がふと気になって聞いてみる。
「ああ、
「この叩いてよれた紙は、使い道はあるのですか。」
「ないよ、体や尻を拭くには硬すぎてゴワゴワする。この紙に書くには、羽ペンじゃ引っかかる。ガラスペンはいけるが、あのペンは普段使いに向いていない。包装用にするには大きさがなあ。箔を作るときは、紙をそれなりの大きさにしちまうからな。」
確かに紙の大きさ的には、大きいものでも、一辺が指先から手首までの長さくらいか。
ふと思いついて、聞いてみる。
「この紙、俺がもらってもいいですか?」
「いいぜ、そんなものこっちが持っててもしょうがない。今もし、整理と掃除手伝ってくれたらこの店にある、この叩いた紙は全部持って帰ってもいいよ。」
ということで、装飾屋の手伝いをすることになり、掃除と整理を手伝って、結構な量の使用済みの
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