10弾 魔術能力を測定しよう
研修が終わり、場所を変えて地下室っぽい所へ移動し魔術測定を実施する。どうやら測定するのは俺一人。他の研修受講者は、各自長短の杖を持ってどこかへ行ってしまった。ものすごく落ちこぼれた感があるのだが。
測定場所はいかにもそういう部屋といった感じだった。機械からチューブやらが伸びており、何かしらのメータが色々付いている。まるで特撮ヒーローものに出てくる悪役の貧相な研究室みたいだ。黒いローブと黒いフードの似た様な格好の協会員が何やらチェックをしている。
「では、その円の描いている中心に立って、その棒を両手で握って下さい。」
おや、先ほど研修会場へ案内してくれた方か。と思いつつ、天井からチューブ状の管に繋がれた7色の結晶の棒が垂れ下がっているので、両手で握ってみる。
「はい、測定します。何か魔術をイメージして下さい。」
そう言われても、イメージするものがない。とりあえず、火の玉が走りが爆ぜることを頭の中でイメージしてみた。一瞬、測定用の棒がミシミシ軋んだ音を立てる。
「はい、測定……終了です。ではこちらへ。」
「よろしくお願いします。」
協会員に頭を下げて一礼してしまう。
「ギルドの紹介状は読みました。珍しい方ですね、魔法属性全属性持ちはあまりいないものですから。」
「この測定で何かわかるものでしょうか?」
「そうですね、端的にいうと、この人は魔法を使う方がいいのか、魔道具を使う方がいいのかがある程度わかります。あと魔術の資質が分かります。」
「それらが分かれば、成長方向が定まるとか?」
「ええ、そういうことです。ニシキ様の場合、魔法も魔道具もいけます。」
「それはいいことなのか?」
「自在に活躍、成長できるということです。ただし、成長方向が掴みにくくなるかもしれません。あと、資質の問題が。」
何かあるのか…
「魔力量も悪くないのですが、魔法の変換速度と魔力の瞬間放出量及び発動瞬間時の事象変換エネルギーが大きすぎる様なのです。」
「つまり…」
「魔法を発動し続けるとすぐに、体力に影響が出てしまう可能性が大きい、ということが一点、もう一つは、魔法用の杖や魔道具が発動に耐えられるかどうか、になってしまいます。杖や魔道具が発動の瞬間壊れてしまうこともあり得ます。」
「えっと…」
俺の顔から血の気が引く音がする。
「店で魔法を発動できるためのアイテムがあまり売っていないかもしれないのです。」
「結局、使える杖とかがないから、俺は魔法を発動できない、ということになる。」
俺はうめく様に呟いた。
「でも道具屋や武具屋に、もしかしたらあなたの魔術能力に対応できるアイテムがあるかもしれません。」
協会員の方がそう言って慰めてくれた。その時、測定用の棒だった七色の結晶の棒がピシリと音を立てて、
「あら…すみません、測定装置が壊れた様ですね。魔術協会では、魔術関係の相談にいつでも応じますので、ご予約いただければ対応します。魔術能力も本人の成長によって、変化していきますので。」
ということで、協会を追い出される様な感じになった。
しょうがないけど、店を回って探してみるか。ダメな場合は戦士型で依頼各種をこなすしかない。重い気持ちになってしまった。
その翌日、街の色々な道具屋や武具屋をまわりながら、魔術協会の魔術能力測定結果を説明しながら色々な魔道具や杖についてどれがいいか選んでみたが、結局この街には今の時点で、これといったものはなかった。
ただ、道具屋や武具屋をまわったことで、この異世界では、魔道具や杖を介して魔法を発動させることについて分かったことがあった。
まず1つ目は、低威力で素早く発動させるには、魔道具か
2つ目は、誰がどういう魔法を使えるかは、あまり開けっぴろげにしないということ。何が使えるかは依頼やクエストで他の冒険者と組んだ場合、ある程度推測されるが、魔法の手の内はあまり他人に見せないし、
3つ目は、魔法の組み合わせによっては、低威力魔法でも大きな効果を出す場合があるということ。でもこれを俺が知っても、俺に合う魔道具や杖のない状態では実感ができないだろう。
ま、とりあえず街もあらかた回ったし、組合本部付きとして活動するための準備を一旦終わらせよう。
「ということで、今後ともよろしくお願いします。メム様。」
宿での最後の夜であったが、ケジメとして女神様に挨拶する。
「一緒にこの世界を回って、元の世界に戻りましょう。ダン。」
メムが答える。
「ええ、ただし食費の問題をなんとかしないといけませんので、街中であまりあれこれ買い食いしないで下さい。」
「そんなにかかったの?」
「ええ、冒険者用の装備や道具類等で約12万クレジット、俺たちの衣類やら下着やらタオルやら衣類と雑貨で約10万クレジット、俺の食費が1万クレジット。色々動き回ったとは言っても、あなたの買い食いの費用だけで4万クレジット、食べ過ぎじゃないですか。屋台のスイーツ、揚げ物、焼き物、飲み物、などなど、そこに宿での食事を考えると、相当燃費が悪いです。」
「ソ、ソンナコトハナイワヨ。ワタシモ、アナタヲ、ウナラス活躍ヲスルワ。」
「カタコト感を出して言われても…期待していいのか悪いのか。」
「期待していいに決まってるじゃない。」
元女神猫が胸を逸らして言う。
「ええ、じゃ明日から頑張りましょう。」
色々不安である。かかった食費分の以上の活躍は見られるのか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます