2弾 神の世界で生まれ変わろう
女神様は俺のリアクションに戸惑いながら、
「そんな、やめて下さい。たまたま最近の死後の担当に噺家がいたものですから。一席やってくださったのです。その時の雑談で出た話です。」
噺家と女神の雑談、見てみたいものだが。一体どんな噺家が?
「さて、一つご確認いたします。ここにくる直前の記憶は?」
「確か横断歩道を渡っていたら、車が突っ込んできて。この確認は何の意味が?」
「いわゆる本人確認です。はい。ちなみに、死因は、パトカーから逃げてきた信号無視の自動車にはねられての事故死、ほぼ即死です。」
「なるほど、それで俺はそいつにはねられて当たりどころが悪く死んでしまったということかな。」
「はい。やはり未練とかお有りのようですね。」
「うん、そっかー、……………未練がないと言ったら嘘になるし、まあこの人生に納得できない点もあるけど、割り切るしかないかと思っています。今は、この神の世界とやらにものすごく好奇心が湧いているのだけど。まあどうせ来月にはリストラされる予定だったし。」
「そうですか、意外と割り切りがいいように見せてませんか。」
「まあものすごく辛いこともあったけど………、でもまあ、今ここで泣き喚いても、元にも昔にも戻してくれるわけでもないでしょう。ここまで来たら、もう割り切っていくしかないのかなあとも思ってますよ。」
「そうですか、ここまではっきりと受け入れようとする人も珍しいものですから。他の方々でこうも割り切りがいいかたは、あまりいないもので。では今後についてご説明しましょうか。」
俺はふと思った。割り切りが悪いといわれた方々はここでどんな行動をしたのかな、駄々をこねて床に寝っ転がるとか、必死でここから逃げ出すとかと。
「なんだい、死後の世界のツアーかい、このまま三途の川を渡って、閻魔様の裁判か?」
「いえ、この世界でまた生まれ変わることになります。」
「ずいぶんあっさりとしているな。」
「そんな地獄極楽の話は、多分誤って伝えられているのではないでしょうかね。そもそもここに来た方々は、基本転生され今までの記憶をリセットし、赤ん坊からスタートし直しますので。」
「ま、確かに地獄極楽については世界各国でもいろいろな形の伝承があるしな。まして、地獄や天国発の動画中継なんぞ見たこともない。じゃあこの地球上のどこかに生まれ変わって赤ちゃんからスタートし直す、この今の会話も含めて全部リセットされるという理解でええのかな。やはり心中は穏やかでないがな。」
「まあ大丈夫ですよ。ええ、こちらの部屋へどうぞ。この中に『装置』がありますので。」
示された部屋に入ってみると、まるでこれは…
「病院のMRI検査みたいやな。自分の頭やら内蔵のどこら辺かが悪いのか見てもらうような気分だな。まあ顔も性格も悪いし、腹も黒いけど。」
40代後半になってから、何度も腰やら胃腸やらの不調で、MRIやらにお世話になったなと思いつつ、
「では、こちらに横になって下さい。」
と女神様が誘導してくださるので、それに従い横になる。
軽いボケはスルーされたようだ。
「仰向けでか、それともうつ伏せでかい?」
「どちらでも問題ありません。これであなたは、赤ん坊から生まれ変わることになります。ああ、そのままでいて楽にして下さい。」
と言いつつ部屋を出ていく。
死後の流れは淡々と進んでいくなあ…もう少し割り切りよくいくんじゃなく、何かごねるかボケをかますかしても良かったか。まあ、さっさとしたほうが良いだろうし。
我が人生に一片の悔いなし、とはいかぬ人生だったが、西木 弾よ、さらば。
と一人覚悟を決めた感じでじっとしているが、何にも起きない。
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