第二章・あなたといつもいられたなら3ー②

そして、それはついに爆発した。

側室による陰謀で、レヴィアーナの体が穢されたのである。


側室の虜だった皇帝とは、一度も交わった事のない、まさに『白い結婚』だった。

結婚式から三年間、皇帝から放置され、側室からは虐げられ続け、精神を病んでいたレヴィアーナは、醜く肥えた馬番に穢され、暴力的な行為により女としての機能を失う。

そして、その絶望によって膨大なる力を得た。


当時の聖殿に在籍していた、魔導士達の力を奪い取るようにして体に取り入れ、その全てを黒魔法によって昇華させ、皇宮を焼いた。

その火の粉は次々と燃え移り、ダントニオ皇国の中心部は火の海となる。


レヴィアーナを助けようとしなかった皇帝は、喉から尻孔までを串刺しにされ。

虐げ続けた側室は、レヴィアーナの召喚した死霊達に犯された。

死ぬのを許されなかった彼女は、何日も何日も死霊達に強姦され続けた後、絶命した。


そうして当時、膨大なる魔力を持ったエレンが、唯一力を使える魔導士として、レヴィアーナと対峙した。

最早、自我さえも失った皇妃に言葉が通じる筈もなく、レヴィアーナはエレンによって封印されたのだった。


「あれから200年、私は完全にレヴィアーナの肉体を葬り去った筈だった。だが、今また同じ魔を感じるとは」


「中央にいる、誰なのか分かるのか?」


「この中心地にはいる。だが、上手く他人の中に潜んでいて、そのはっきりとした場所や、取り込まれた人間までは分からない」


「その本人に会えば分かるか?」


「聖魔導士のマーロンや、勘の鋭いデズモンドですら分からないんだ。特にデズモンドは、その片鱗でも感じられそうなものを……。お前はどうだ?アダム」


「俺は、出力系の魔導士だから分からない」


ギルバートの兄弟にしても、分からなかった。

兄のブランドンに魔力があるのは判る。

だが同じ兄弟である、ギルバートとジェレミーに関しては、その才覚が微量過ぎて感じられない。


「エレン、この間、デズモンドの店で会った兄弟に、魔力は感じられたか?」


「魔力と言える程ではないが、弟の方はもしかしたら、鍛えれば多少は使えるかも知れんな」


やはり、ジェレミーの勘は優れていた。

ジェレミーは、ブランドンの中にある『何か』を、確実に感じ取っていた。

だから、それを無意識に避けようとしていた。


「エレン、魔の正体を封じたら、その後はどうする?」


「お前にもう教える事は何もない。独りで生きていきたいのなら、そうすれば良い。そろそろ、この老婆に付き合わされるのも飽きて来ただろう」


「老婆っていう見た目じゃないけどな」


「人の目に映るものなど、何の確証もないあやふやなものばかりだ。この世の誰も、真実など見えはしない」


そう寂しげに言いながらも、エレンのその顔は無表情だった。

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