第二章・あなたといつもいられたなら2ー②
この街では、もうかなり『骸骨の魔導士がいる』と噂にはなっている。
アダムが彷徨くのは大方夜半ではあったので、子供と出逢う確率は低い。
だが、花祭りともなると子連れの家族も、夜遅くまで楽しんでいる。
子供には刺激的な風貌ではあるし、フードで隠すにも、その恐ろしい顔は見え隠れしていた。
「花祭りのある公園周りは結構な人だぞ?……その……アダムはかなり目立つんじゃないか?」
「大丈夫だ。そう長い時間でなければ、この仮面を隠す事も出来る」
「隠せる?」
「この顔には強い魔力が掛けられているから、数時間しか誤魔化せない。私でも、魔力をかなり使わされるんだ。相手を怖がらせない為にも、ヒーリングする時はそうやって顔を隠す」
「それ、永久に外れないんだ?」
「恐らくはな。外れるとするなら、私が何らかのきっかけで魔力を失うか、命を落とした時だ」
「そうなんだ」
だとしたら、アダムの素顔を見る機会はまずないだろう。
だが、ギルバートはそれをさほどに残念には感じてはいなかった。
この骸骨の顔も、今となっては親しみすら感じていたからだ。
アダムが、自らの顔を撫でると手のひらから、白い光が放たれる。
すると、そのフード中からはどこにでもいるような、一重瞼の凡庸な顔が現れた。
「えっと……それが、アダムの素顔?」
「いや、比較的に目立たない顔にしてみた」
「本来の顔は目立つんだ」
「恐らくはな。自分でも12の時を見たのが最後だったが、私の顔は目を引くらしいから」
たとえ素顔ではなくても、ギルバートは嬉しかった。
アダムの表情が見られる。
それだけでも、互いの心が近付いたような気がした。
「その顔で笑える?」
「笑える」
その細い目の男は、優しげな笑顔を浮かべた。
ギルバートの心は、火を灯したように暖かくなった。
街の中央にある公園は、大きな池を中心に様々な花や草木が茂り、普段は人々の憩いの場として愛されていた。
そこは年に1度、ダントニオ皇国の国花でもあるダントニアの花が咲く季節になると夜通し出店が出て、賑やかになる。
『花が満開であれば、その1年は良い年になる』と言われていて、人々はそれを愛でながら祝い、腹一杯になるまで食べ、酒を酌み交わす。
通りには所狭しと店が出て、子供達もはしゃいでいた。
「凄い賑わいだな」
「この祭り見たさに、遠くから来る人もいるしな。あ、あそこだよ」
その出店の前には、いくつものベンチがあって、人々は楽しげに語らい合っている。
ギルバートは、その一角にアダムを座らせて、自分は食べ物と飲み物を買いに行った。
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