第二章・あなたといつもいられたなら1ー③

オズワルドが懸命に、アダムがどれだけ地方の人々をヒーリングで救って来たかを切々と語り。

ジェレミーも、兄を助けてくれたと聞かされれば、それ以上アダムを責める訳にも行かず、ようやく納得したようだった。


「そういえばさ、骸骨男が連れてるあの子、女の子なのに魔導士だって言ってたよね?女の魔導士なんて、聞いた事がないんだけど?ギルも聖殿で働いてて、女の子って見た事ある?」


「確かにないな」


「いや、全くいない訳じゃないよ。少ないけどね」


「デズモンド。どうして、女性に魔導士が少ないんだ?」


確かにこの世界は女性が少なかったが、それにしても聖殿に一人もいないのには違和感はあった。

元魔導士だったデズモンドは、言い難そうに口元を覆う。

それは、公にされてはいないのだろう。

デズモンドは、二人に顔を寄せるようにと手招きをした。


「基本的には、女性にはどういう訳か魔力が伴わない」


「そうなの?」


「そうなんだ?」


「魔力を持つ人は、女性としての機能を失っているか、元から子宮がない人である場合が多い」


だとしたら、エレンは見た目が女性であったとしても、子供を産めないという事になる。

アダムと恋人同士でありながら、二人は子を成し得ない。

だが、それは妙に納得させるものがあった。


二人の間には、男女の甘やいだ雰囲気の欠片もない。

どちらかと言えば、あの威厳ある話し方から、見た目とは真逆でエレンの方が年嵩にすら感じる程だった。


「他には言うなよ。ここだけの話な」と言って、デズモンドは厨房へと戻って行った。


二人になった途端、ジェレミーはギルバートの肩をガッツリと掴んで、睨め付けて来た。


「ギル、卒業してからとか待たずに、もう引っ越そう!」


「はぁ?!」


「あの家は兄さんにあげれば良いだろ?やっぱりギルは、僕が傍にいて守ってあげないと!」


「学業は負けるけど、剣でならお前には負けねぇよ!卒業したてのヒヨッコに守られるって、どれだけ情けないんだよ!俺は!」


「僕は、あの骸骨男もやっぱりギルに懸想してると思う!」


「け、懸想?!」

 

「それにもう、僕はブランドン兄さんと暮らしたくないし。僕は一生、兄さんに歩み寄れないから」


ジェレミーは、魔力こそないが精神の共感性が高く、相手の真意を見抜く力がある。

ギルバートに邪な感情を持つ男は、出会った瞬間から見抜くし、ジェレミーに睨まれた男はいつの間にかギルバートの傍からいなくなる。


今思えば知らぬ間に、裏で何らかの圧を掛けていたのだろう。

そのジェレミーが、アダムを『ギルバートに懸想している』と言う。

だがギルバートからすれば、アダムはいつも紳士的だったし、悪意や欲望を感じるような事はなかった。

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