第二章・あなたといつもいられたなら1ー②
「おい、ジェレミー。何もかもを悪く取るな。アダムがいてくれたら、変な奴が寄って来ないって言ってるんだから」
「そうだよ。こないだだって、ギルバートに絡んで来た、斜向かいの服屋の助平店長も撃退してくれたんだから」
『余計な事を言うな』と、ギルバートが睨むと、オズワルドは慌てて自らの口を押さえる。
それを聞いて、少女のように愛らしいジェレミーの目尻が、悪鬼のようにつり上がった。
「あのエロ店長か!あいつ!売り物の服を、全部引き裂いてやろうか!」
「いや、だから!もうあいつが絡んで来る事は今後ないから!」
「骸骨男が、何してくれたの?!」
「それは……」
ギルバートがリリス亭でいつものように夕食を取っていたら、まるで待ち合わせしていたかのようにして、男は許可なく隣に座り、肩に手を回して来た。
「ここは奢らせてくれ」だの、「この後、また飲みに行かないか」だのと口説かれ、背中を性的な意味を含んだかのように、ねっとりと撫でられた。
それにはギルバートも流石に堪えられなくなって、反撃しようとした途端、背中を這い回る手が止まった。
背後に凄まじい怒気を感じて振り返ると、アダムが男の手首を掴んで見下ろしていた。
途端に、ニヤニヤとしていた男の顔が無表情になり、おもむろに立ち上がって「すみませんでした」と頭を下げ、帰って行った。
アダムに聞くと、魔法で盛りまくっていた性欲を削いだという。
菌の繁殖を抑えるのと同じ方法で、暴走する部分を鎮めた。
それで恐らくは当分、男としての機能は果たさなくなるらしい。
「あれから服屋の店長、俺とすれ違っても挨拶しかして来なくなったし。性欲が治まって冷静になったみたいで、他に目もくれず、奥さんにも尽くす愛妻家になったって噂だぞ」
「あの骸骨男……いい奴だったのか……」
「あの店長も、これからは普通の生活を送るんじゃないかな」
「どうせなら、急所を抹消してくれてもいいのに」
「おいおいジェレミー、それは黒魔法でしょ?」
元魔導士のオズワルドが、思わず突っ込む。
魔力には白と黒がある。
白魔法は人体の治癒や、枯渇した土地に水を湧かせたり、緑の育ち難い土地に農作物を育てたり、人々の役に立つ力を正しく使う為にある。
対して、黒魔法は死者を復活させたり、死霊を操ったりなど人に害をなす魔法であり、そうした使い手だと分かると力を封印され、逆らえば死刑となる。
現在、存在する魔導士は、全て白魔法を使う魔導士だ。
アダムが封印されているのは、あまりにも白の魔力が強過ぎるが故であった。
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