第一章・あなたと出会えたなら4ー①
二人が共に相容れず、譲り合いもせぬまま、ブランドンの束縛に耐え兼ねたジェレミーは、ついには剣士育成学校の寄宿舎に寝泊まりするようになった。
本来なら、歩いて通える位置で寄宿舎に入る必要性はなかったが、家庭内不破を理由にしたのだろう。
すぐに申請が通って、家を出て行ってしまった。
するとブランドンは、今度は残ったギルバートへ干渉し始め、それには嫌気が差してしまい、夕食を外で取るようになった。
それには、リリス亭に行けばアダムと会える、というのもあった。
いつの間にか、アダムと会うのを楽しみにしている自分がいる。
これまで、友人と言える人間は何人かいた。
人を惹き寄せる魅力のあるギルバートは、別段何をするでなくとも、自然と人が集まって来て、大抵はその中心になっている。
だが、いつも誰に対しても何か裏があるように思えて、深い付き合いをしては来なかった。
この国は、男でも子供が産める人間がいるのもあってか、同性愛者が多い。
ギルバートは、そうした相手から誘われる機会が多く、今ではそれを敏感に感じ取り、無意識に逃げる術を身に着けていた。
そんな男に対して引き気味な自分が、自ら惹かれて会いに行くのは初めてだった。
それも骸骨頭の、得体の知れない相手などに。
アダムは大体に於いて、一人でリリス亭に食べに来る。
いつも水以外を頼もうとはしないエレンは、外食するのを好まないのか、たまにしか同行しては来ない。
その他愛もない食事での会話は、兄弟関係に悩むギルバートの心を癒やし、自然と酒も進んだ。
「アダムは魔導士として、聖殿から呼ばれないのか?いくら繋がりがなくても……」
「いや、どちらかと言えば、聖殿の方から関わるなと言われているんだ。俺は異端だったから。だから、聖殿とは一切関係なく、エレンと地方でヒーリングして廻っている」
エレンとは、いつからの付き合いなのか。
アダムの年齢は不詳だったが、エレンはどうみてもまだ十代にしか見えない。
その優雅な所作は、由緒正しい家の出身ではないかと察せれたし、もしかしたら家同士の結婚だったのかも知れない。
エレンの尊大な話し方もともすれば、皇室や、他国の姫のように思えなくはない。
だとすれば、二人は想像以上の高貴な存在ではないのか。
そう今更ながらに思い至って、ギルバートは素面に戻った。
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