第一章・あなたと出会えたなら2ー②
ギルバートは、エレンに釣られて座った目の前の骸骨頭の男、アダムと目が合った。
表面上は骸骨にしか見えないが、その目の奥には澄んだセルリアンブルーの瞳が見える。
その宝石のような輝きに、ギルバートはドキリとした。
本来なら、誰もが畏怖するような見た目ではある。
ぱっと見は仮面を被っているようにしか見えないが、頭髪が生えているのからすれば、確かにジェレミーの言う通り呪いのような封印をされているようにしか思えない。
アダムは、目の前にあるパスタを上手にクルクルと巻いて、スプーンに乗せて口へと流し込む。
その所作に優雅なもの感じて、思わず声を掛けてしまった。
「器用に食べるんだな」
「皿からかっ食らうと思ったか?」
「いや、……まぁ仮面だから、食べる時は脱ぐのかなぁと思ってたから」
「これは取れない。俺の力は制限されてるんだ。これがなかったら制御しきれないかも知れないから」
「魔力がって事?」
そこまでの膨大な魔力なら、聖殿が徹底的に指導して管理し、上位の魔導士として使いたい筈だ。
それをしないのには、何かしらの理由がある。
気にはなったが、初対面で聞くべき事柄ではないと思い、ギルバートはそれ以上、問いただしはしなかった。
だが逆に、今度はアダムの方から聞き返された。
「剣士か?」
「ああ、聖殿勤めのな」
「名前を聞いても良いか?」
そう言って、骸骨男は自ら名乗った。
「俺は、アダム。アダム・シャドウズ。こっちは、連れのエレン・シャドウズだ」
「俺は、ギルバート・ヴェンジェンス。こいつは弟のジェレミーだよ」
アダムとエレンが同じ名前という事は、この二人は夫婦なのだろう。
田舎を廻って、ヒーリングをしながら路銀を得ている流れの魔導士夫婦。
見た目も何もかもが異色な二人には、ジェレミーが不審に思ったのか、眉間に皺を寄せていた。
「ちょっと、うちの兄に気軽に話し掛けないで欲しいんだけど」
「ここは、私語禁止の店か?」
「そうだよ。見知らぬ人間が話し掛けるのには、身分証明書を提示する必要があるんだ」
「皇宮並みに、警護の厳しい店なんだな」
アダムは、ジェレミーの見た目の幼さから、他愛もなく絡んで来る子供の戯言だと思ったのだろう。
もしくは、元よりの器が大きな男なのか。
真正面から『得体の知れない人間だ』と言われても、さして気にしてはいないようだった。
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