第3話「術式の発現」
そして俺が【魔術協会】の術師が集う場所にやって来て三日が経つ。俺は天真によって本格的に術式の発動を試みることになった。それも意識するだけで水が発生することが分かったのだ。これはもしかすると発生させるのと同時に操れるかも知れないと言う話になった。それには翔子さんも一緒になって様子を見てくれる。そして最近になって消化さんの術式も明らかになるのであった。
「私の術式は【黒天翼】だよ。黒くて空を自在に飛べる翼をいつでも生やすことが出来るの! だから、邪魔にもならないし、一人までなら、抱えて飛行することも可能なんだ」
「へぇ? 便利ですね? それよりも俺は水が発生させられるみたいだけど、何か条件があるのかな?」
「お? それに気付いた? さすがに頭がキレるね? そうだよ。術式には発動条件があるんだ。それを満たせば自在に扱える」
「なら、俺にはどんな発動条件を満たすと良いんだろう?」
「殆どの場合は意識するだけで発動できる。例えば翔子は日頃から鶏肉を摂取しないと機能しない。なら、零介は水分を補給しないと駄目かも知れないな? しかし、それらの縛りがなくても発動できる可能性もなくはない。だから、しばらくは様子を見よう」
「はい!」
そんな風に天真からは話があった。俺としては水分の補給ではない条件だと良いと思っている。それがベストとなのは考えるまでもなかった。しかし、それが可能なのかはこれから次第だと言う。まさに現時点では解明されていないと言う訳だ。
そして次の日になった。俺はいつ術式が発現するか分からないので、これ以上は学校に通うことをしない方針で行くみたいだ。それも中学を卒業した時には、こにらで用意した学校で過ごすことになるみたいである。それも天真と翔子さんがが教師を務めており、勉強面においても教わることが出来るらしかった。今度からは二人を先生として扱うように周囲の術師に注意を受けたぐらいである。
それから俺の術式について分かったことがあった。それは水分補給に関係はないと言うことである。それも水を発せさせる条件としては日頃の体力が関連しているようだ。しかし、体力に関係すると言っても、実際は保持している千億分の一しか減少しないと判明した。なので、上限を増やすには体力を付ければ問題ないと言う訳である。後は意識することで視界に入る範囲内でしか水は発生しないようであった。
それが判明してから何度も水を発せさせる練習をする。それによって俺は自在に水が起こせるようになって来たのだ。後はコントロールできるようにすれば、完璧に術式と言えるレベルだと天真先生は言っていた。
それから俺の身には炎も起こせるようになる。それも意識することで視界で捉えられる範囲の中で起こせるようだ。炎に関しても軌道が操れるみたいで、俺は緻密なコントロールを可能にする訓練を受ける。それによって火力と操作技術を鍛え上げ、術式の精度を高める方針で行った。
このように俺は複数の術式が扱えてしまう体質に恵まれる。それが俺にとってはラッキーな話だった。
そしてしばらくして俺にも術式が自在に扱えるようになる。それを見越して俺も任務に出られるようになり、始めのうちはかなり簡単なレベルからスタートした。それも切り傷しか与えられない魔獣の中でも最弱に等しい強さを対象にしている。しかし、それでは簡単すぎて話にならないと言うことで、援護してもらいながら殺されない程度の魔獣を対象にするのであった。
「はぁぁぁ〜! 疲れたぁ。訓練も楽じゃないな!」
「当然でしょ? お前は良いよな。複数も術式が所持できるのは希少だと言われているんだ。その才能は大切にしろよ?」
「分かってるよ。それに俺は闇斗を殺すために強くなるんだ。今でも逃げ回っている闇斗を捕まえてこの手で息の根を止めのさ!」
「やるね? あいつは一級術師だよ? それなりに強い奴だ。そいつを殺すのは相当じゃないと無理だと言われている」
「マジで? 知らなかった」
「それびゃあ命が幾つあったって足りないかもよ? 闇斗は天真先生と互角の実力者だった。それを倒せるのは天真先生ぐらいだ」
「そんなに強いのか? だったら、そらぐらい強くなってやるぜ! 天真先生だってその手で仇を取るように行ってくれているんだ。それは俺にとって試練みたいなものなんだよ」
「ふーん? ま、精々頑張れよ」
そんな風に俺を応援してくれているのは御影黒美だ。彼女は【影術】と言って、自身の影から分身を作り出したり、武器を生成させることが可能だと言う。中でも分身は特に有効であり、複数に分かれることが出来るので一斉攻撃を可能にしているのであった。しかし、本体に攻撃が及ぶと分身も消滅してしまうため、それらに紛れていないといけないのだ。その技術を身に付けている最中だと言うけれど、大体は簡単にバレることはなかったのである。
そして俺は実践経験を積んで大分戦闘に慣れて来た。現在の俺には【水流操作】とか【火炎操作】などの術式が取得できている。それらの中でも炎の軌道を操る術式に関しては攻撃に特化しているので、魔獣を退治するには最適だった。後は火力を底上げさせる訓練と新たな術式の発現を待つことにしているが、今の段階ではまだそれが見られない、しかし、ある日を迎えた頃になって新たに術式が発言しようとしていた。
「今度も炎の術式だ。それも今度は身体の部位に纏うことが出来る。纏われた部位は強化されていた。つまり炎を身体に武装させることが可能な術式だから、【バーンアーマー】と名付けよう!」
「なるほど。これは【バーンアーマー】になるのか? それは良いな」
主に拳に武装すれば強化した上で殴り付ける攻撃が有効になる。さらに胴体に武装することで防御力の上昇にも繋がるのなら、同時に扱えるようすることで大幅に戦闘能力が上がると思われた。なので、俺はすぐにでもそれをマスターする必要があり、その取り組みに入るのである。
そして俺が【バーンアーマー】を完全取得するために訓練に励んでいると、そこに証拠先生がやって来た。翔子先生は俺に差し入れを持って来てくれ、しかもそれは現在の季節には最適な果物だ。八月の季節と言えばやはりスイカなので、それを俺は有り難く頂く。俺は訓練をキリの良いところで中断して、スイカを即行で食べるのであった。
「美味い! やっぱ夏はスイカだな」
「天真先生の分まであるから食べて? 訓練に夢中なのも分かるけど、偶には休憩することも大事だからね?」
「分かってるよ。それが今回の術式は戦闘面において強力だと言えるんだ。これを取得しない手はないと思っている。だから、じっくりマスターさせるつもりだ」
「それは良いかもね? 頑張って!」
「はい!」
俺は翔子先生から頂いたスイカを平らげると、少し休憩を挟んだ後で、再び【バーンアーマー】の取得に入る。これに関しては戦闘には最適な術式であり、強力な打撃を直接ぶち込むことで魔獣を確実に仕留める手段には有効だと捉えているのだ。これぞ闇斗を討つにも有効な手段である。
そして俺は炎を胴体と拳の両方に武装させる技術を身に付けた。これはよって身体を強化させることが出来る。防御力と攻撃力の底上げに持って来いでもあることから、これで魔獣も怖くはないと言えた。【火炎操作】では炎の軌道を操るだけでしかないため、外れる可能性は大きいのだ。それに比べて【バーンアーマー】は火力と筋力の両方を鍛えることでその威力が変わって来る。だから、俺にとって今回の術式が発現したのは当たりだ。
それから俺はこの術式を魔獣に試してみることにした。それも少し三級に当たる難易度に挑戦しようと【魔術協会】の方でも提案がされる。なので、俺は三級に挑むことになったのだ。
「今度の相手は三級だ。しかし、これもまだ大した相手じゃない。一級にもなればこれよりも手強くなる。けど、今はまだ良いんだ。君もまだ中学三年生になる年頃だ。これから慣れていくと良いよ」
「一応勉強はしてるけど、訓練の方が力を入れている現状も悪くはないと思う。それに術師にも階級があるんだろ? 俺ならどれぐらいなんだ?」
「君は今回の魔獣を相手にした時の様子で判断しようと思っている。術師の階級によれば死の淵に立たされる恐れがある。しかし、俺と翔子のように一級にもなると、それなりに階級を気にすることが一切ない。これも術式には有りがちな話だ」
「ふーん? さすがに最大階級だと、目指す場所がなくなるのか? それに一級以下なんてあいてにならないもんな?」
「あぁ。偶に二級を同時に五体も相手させられることもあるけど、俺の【シャイニングブレイク】で蹴散らせるレベルだ。この技を身に付けてから俺に敵はいなくなった。しかし、最近になっては闇斗の他に俺を楽しませてくれる相手はいないよ」
「そんなに強いのか? やっぱ侮れないな」
「あぁ。もしかしたら君よりも先に俺が殺すかも知れない。君が強くなるまで待てないんだ。今では魔術教団の幹部として活動しているらしいが、あいつは術師の才を見抜く力があった。だから、君の前に現れた時も、複数の術式が発現することは見抜かれていたはずだ。それを理由に君を欲することで、邪魔になった両親を殺したんだと思う。そして俺よりも先に回収する予定だったが、俺が予想以上に早く現着したことで予定が狂った。俺とやり合えばどうなるのか分かっていたんだろう。それで戦闘を回避したと言う訳だ」
「なるほど。俺の両親が殺されたのは、全部この術式によるものだったのか? 少し嫌になるな」
「分かる気がする。しかし、今ではもう遅いと思った方が良い。君はすでに術師の道を歩んでいる。それを途中で投げ出すと、またいつになって闇斗が現れるか分からない。君も奴に復讐したいなら、俺が殺す前にそれなりの実力を身に付けなさい」
「了解です。俺も奴を殺すだけの実力者になります」
「それで良い。そろそろ着くぞ」
「はい」
そんな感じで魔獣の出没した現場に到着する。そこでは魔獣が俺よりも大柄な暴れているところだった。しかし、俺なら倒せないほどでもない上にいざとなった時は天真先生が駆け付けると言う。そんな中で俺は魔獣に立ち向かって行くのであった。
(俺なら出来る。こいつは三級レベルの魔獣だ。それほど強くもないと天真先生は言っている。天真先生が嘘を吐く理由もない今では目の前にいる魔獣を倒すことに専念すれば良いのだ。やれる! ここで俺は三級術師になるんだ!)
そうやって俺は気合を入れると、そこで目の前にいる魔獣に向けて走って行った。魔獣がこちらに気付くと、その頃にはすでに懐まで近付けていたので、そこからジャンプして顔面を狙う。顔面をしっかり捉えると、炎を拳に武装してから、殴りつけに行くのであった。
「はぁっ!」
どーん!
勢い良く魔獣が後ろに吹っ飛ぶと、それだけでは仕留めきれなかった。しかし、着地すると同時に姿勢を立て直し、すぐに吹っ飛ばした魔獣の下に飛び込んだ。そして今度は炎を足に武装させて飛び蹴りを食らわせる。
「うぉぉぉ!」
「ギャァァァ⁉︎」
その断末魔と共に魔獣の顔面を潰した。それによって魔獣が命を絶つと、身体が消滅して行くのが分かる。
「お見事! これなら三級術師に推薦できるよ。本部に連絡して手を回すように伝えような?」
「はい!」
そんな感じで俺は三級に相当する魔獣を倒した。それも大して時間を掛けることなく遂行できたのだ。それを見た天真先生は俺を三級術師に推薦してくれるみたいである。俺もようやく本格的な活動が出来るようになると思った時にはこれまでの訓練は無駄じゃないと言えるのだった。しかし、まだ俺には二級以上の魔獣は相手に出来ないのだ。それが俺の内心にもっと強くなりたいと思わせてくれる。そしてさらなるパワーアップを望ませるのであった。
それから俺も術師としての活動に励むことが多くなる。それらをこなして行くうちに報酬金額も得られるようになった。これは俺にとって大きな成長と言えるだろう。
「どうやら四つ目の術式はまだ取得できないようだな?」
「黒美か? それもそうだろ。何せそんなに術式があっても仕方ないと思うしな。それに俺には【バーンアーマー】があれば、大抵の任務は遂行できる。それに不足はないと思っているよ」
「そっか。それは良かったかも知れないよ」
そんな風に黒美は言って来る。彼女は二級術師に位置する上に俺の先輩に当たる存在なのだ。俺も早いうちに二級術師の資格を取得したいと思っているので、この先でも訓練は欠かさないようするのであった。それが俺の最善策と言える。
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