第2話「ようこそ魔術協会へ」

 俺は目覚めた。その時には俺の現状が分からない事態になっている。しかし、それを目の前の男は説明してくれた。


「よぉ? 君には災難な思いをさせてしまうことになるが、それでも話を聞いて欲しい。良いか?」


「——んぅ? こ、ここは……?」


「ここは【魔術協会】の本部だ。きっと今の君にはわからないよ


「——え? 動けない……⁉」


 俺はその場で拘束されていた。それも俺の現状には謎が絡み合って出来た疑問が生じる。何で俺が縛られているのかだけが謎になっており、そこに目の前の男が答えを出した。


「君は俺が連れて来た。大丈夫。君の身体に異常がないかチェックしている段階なだけだからさ。それよりも君に知って欲しいのは両親の話だ。お気の毒に亡くなってしまったよ」


「——え? 両親が死んだ? それってどうして!」


「それは君が自宅に招いたあの男が原因だ。本当は俺が来る予定だったのを足止めを食らった。そして君を誘拐しようと企んだところで俺に邪魔された訳だ」


 悲しそうな表情を浮かべながら俺に事情を話すと、それを自分はどう受け止めて良いか分からなかった。しかし、確かに両親が死んだのは目にしていたのだ。さらに怪しげな男についても覚えがある。それが全部原因だったのであれば、何がきっかけになったのかが知りたいと思ったのだった。


「あいつは誰だったんだ?」


「俺らの元同志だ。しかし、ある出来事をきっかけに犯罪者に成り下がった人物になる。本当に悪いと思ってるよ。けど、いつかあいつは我々が始末する予定だ。今はただひたすら追っている最中である」


 俺に申し訳なさそうに話してくれた男は、両親を失ってしまった自分に謝罪する。そして彼の下に誰かが来ると、同時に拘束が解けた。そこで自由になった俺に向かってこれからのことを話してくれる。


「ここで君には受け入れてもらわないと困る話をする。君は稀に存在する術師の適性に当てはまった。今日から君も俺らの仲間入りだ」


「——え? 仲間入りって何?」


「それはこれから話す。黙って聞く時間をくれ」


 俺はそこで彼の話を押し黙りながら聞くことになった。彼は輝王天真と言って、俺の両親を殺害した奴と同じ術師をしている者だと言う。そして俺が招いたはずの人物だった。そんな人物が俺に話したことは、術師の適性についてである。俺の周囲に起きた不可解な現象は全部自分で起こしたものだったみたいだ。それも通常の術師には見られない力が宿っていると判明したらしい。


「君は複数の術式を所持でキル体質だと判明した。これは稀に見られる体質だが、それでも本当に優れているんだ。そこで君はこの先で術師になってもらいたいと思っている。それも俺と一緒に戦ってくれないか?」


「俺が術師に? 一体何のことだか分からないよ!」


「では、これから俺に付いて来い、俺の術式を実際に見て納得してもらう」


「は、はい!」


 そうやって俺が連れて来られたのは鏡の中だった。説明によると、そこは異空間とも呼ばれる場所で、術式によって形成されているみたいだ。そこで何が起きるのかと思いきや彼は自らに備わった不思議な力を発揮して見せるのだった。


「見ていれば分かる。そこで見てなさい」


 すると、そこで天真が目の前で光を集め始めた。それを一つの球体にすると。、その塊を一気に解き放ったのである。それによって光の球体が向かった先で爆発が起こった。それを見せられて、さっきの原理が分かった気がする。さっきの爆発も彼によって起こされた光によるものだと判明した。それが意味するのは、きっと自分たちは一般人とはかけ離れた存在だと言うことだ。そしてそれが俺にも可能に出来る体質であるとのことだろう。


(まさか俺にも出来るのか? あれで俺の両親は殺されたと言うみたいだな?)


 そう判断した時になって思い出した。それも周囲を水浸しにした原因が術師と関わり合っているなら納得が行くのである。それを踏まえると、俺にも同じような力が備わっていると言うことになるのであった。


「俺にはどんな力があるんだ?」


「それはこれから解放させることで無限に秘められているんだ。君は稀に見る特異体質なんだよ」


「マジか……?」


 そんな風に俺は説明を受けた。それに納得した訳ではないが、それでも俺に何らかの力が秘められているのは明白だ。それに俺は目の前でしっかり証明されている。それも天真が持つ力は本物であると言っても可笑しくはなかった。しかも俺の身の回りにはちゃんと理由にもなる出来事が起きているのだ。それを信じないで何を受け入れなければならないのかと言う話になる。なので、俺は今日から彼に付いて行くことにした。


「なるほど。気付いたら周囲が濡れていたと言うのか? それはまさしく術式が作用している。断言できるな」


「マジか」


「しかし、本当に大丈夫なのか? 両親が目の前で殺されているんだぞ? 悲しくはないのか?」


「そりゃあ悲しいに決まっているだろ? けど、俺にはこの現状に付いて行けない。でも、これから術師になるべきなのは明白だ。それだけですよ」


「そうか。それでは自身の手で復讐すると良いだろう。君なら有能な術師になれる。まだ水が出せるだけしか起きていないようだが、この先でさらなる事態が発生する。その時を待とう」


「はい……」


 そうやって俺は天真から受けた説明に納得した。それが俺にとってこの先の人生を過ごすのに重要な意味を成すことになるのは決まっているように思えたからだ。しかし、俺は水を発生させる術式があると言うが、天真みたいにあれほどの強力な術式じゃないように思えたが、それでも彼が説明した通りだと、複数も所持できるらしい。それが本当なら水が起こせる以外にも発現すると言うことだ。


 そして俺の自宅はすでに潰されることになるみたいである。それも術師になるのであれば、【魔術協会】と呼ばれる組織が用意した部屋で過ごすのが良いとの提案があったようで、今日からそこにお邪魔することになるのであった。


 そして俺がいつでも術式が解放されても良いようにするための仕組みが施される。それは術式を急に発動させないためにあるアイテムで、術師を拘束した時にも利用されるみたいだ。それも特に良くあるケースでは拘束する時になって術式の使用を阻止するためらしい。これなら気付いた時に周囲が濡れる心配はなくなるのであった。


 そんな風に術式を制限することで急に発動するケースは起きないと言える。なので、俺は安心して部屋で過ごせることになるのだった。


 それから俺が部屋で過ごしていると、そこに誰かが自分のところに訪問して来る。ドアを開けてみると、そこにはとある女性が立っており、俺の名前を呼んだ。


「よっ! 零介くん! こんにちは」


「どうも。君は?」


「私は鳥崎翔子。同じ術師をやっている者だよ。実は挨拶に来たんだ」


「あー。それはわざわざすいません」


「ま、良いから中に入れてよ」


「え?」


 そんな感じで俺は翔子さんを部屋の中に招く。それも彼女から進んで入りたいと言うので、俺はそれを断ることが出来なかった。けど、彼女は特に危なそうな人物でもなかったので、俺もスムーズに入れることが出来たのだ。それに俺が今の時点でいる場所は安全であると言える。そこでまさかさっきみたいな事態が起こるとは考えにくいのだ。だから、俺は翔子さんを疑わずに招くことにしたのである。


「いきなりでごめんね? でも、今度から零介くんも術師になるんでしょ? それじゃあこれからは同僚だよね?」


「あぁ、はい。それもそうですね?」


「この先はよろしくね! いつか一緒に任務を任せられる時が来ると思うからさ!」


(任務ってなんだ? きっと術師に任せられる仕事だよな? 一体どんな仕事になるんだろう?)


 俺はそこで疑問に思ったことを翔子さんに尋ねた。すると、翔子さんの口からは任務についての話が聞ける。


「任務って言うのは術師に与えられる仕事だよ。世の中って言うのは非術師が生きやすくなっているでしょ? そこで自然発生する魔獣を相手に戦うのが務めなんだ。けれど、時には同じ術師を相手する時もあるんだよ? それも君のところにも来ていた暗狩闇斗とかが挙げれるわ。いつまた襲撃されるか分からないから気を付けて?」


「はい」


 そこで翔子さんの口から出て来たのは、闇斗と言った俺を襲撃した人物の話だ。彼を心から知っていた人たちと言うのはどれだけしかいないのかになると、そこで翔子さんが謝罪をして来るのであった。


「ごめん。本当は優しい子だったの。でも、いつの間にか不正を働くようになって【魔術協会】の敵になって三年が経った。そこで彼に下された処分は死刑。それが例え元同志であってもだよ!」


「翔子さん……?」


 いきなり泣き始めた翔子さんが、その場で顔を隠した。涙が抑えられないのは、つい三年前までは一緒に活動していた闇斗が敵に回って処分が下されたことにだろう。しかし、俺にはどんな事情があったのかは知らなかった。それに俺はこの組織に入ったばかりで、まだ術式を完全に使いこなした訳じゃない。だから、これからなんだ。それが翔子さんにとってはどうしようもない元同志のことを今でもやりきれない思いでいるようだ。それを俺は何で復讐などしなくちゃいけないのか考えさせられる。しかし、確かに天真は言っていたのだ。


(俺には分からなくなってしまった。けれども彼は正真正銘の殺人鬼だ。そんな彼に一体どんな信頼関係を築いていたのか俺は知らなかった。未だに彼を想う人がいると言うのにも関わらず、俺の両親を殺したのだ。そうだよ。彼はすでに復讐対象でしかない。でも、考え直す必要はないのか?)


 俺にはそんな思いが生じた。闇斗は確かに悪者だと天真の言っていた通りだ。しかし、翔子さんにとっては大事な同志なのである。それを俺はどう対処して良いのか分からなかった。けれど、そこで翔子さんが涙を拭う。そして俺に再び謝罪をすると、そこで彼女は自身の本心とは別に彼をどうしなくては行けないのかを話した。


「ごめんね? 私も覚悟は出来ていたはずなのに泣くなんて良くない。あいてはすでに殺人鬼に成り果てた死刑対象だもん。殺すしかないのよ。だから、貴方の手で殺してあげてくれるかな?」


「俺が? 本当に良いんですか?」


「うん。しょうがないよ。すでに私の妹も彼に殺された。復讐対象でしかないよ」


 どうやら翔子さんも大切なものを奪われたようだ。それなのに何で泣いていたのかが疑問に思うところだ。もしかしたら妹さんを思って泣いたのかも知れない。だとしたら、本当に闇斗は殺害対象であり、殺さなくては行けない相手なのであった。


 それから俺は翔子さんの口で妹さんの話を聞いた。翔子さんの妹さんも同じ術師だったらしい。それも翔子さんとは良く一緒に任務をこなしていた仲だったようだ。それを闇斗は奪ったのだ。それは俺も許せない話でしかなかったのである。そこで俺はこの手で彼を殺すのだと決めた。


「ありがとう。貴方のお陰で元気が出たよ。それに貴方も私と同じ境遇に立っていたんだよね? だから、今度は復讐しよう?」


「はい。必ず殺して見せます」


「うん」


 そうやって俺は闇斗に復讐心を持って殺すことを誓った。俺の両親も彼によって殺害された被害者なのだ。そこで復讐しないではいられないのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ウィザードエデンズ 源真 @mukuromukuromukuro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画