第51話
たしかに彼女の『死の舞踏』は、斬新な切り口で死神と骸骨の新たな一面を捉えたのかもしれない。その点では、非常に惹きつけられるものがあったことは事実。それでも、ブランシュのものが劣るか、と言われればそうではない。
少なくとも、自身にはあちらの、寄り添ってくるような死神のほうが琴線に触れた。贔屓とかはなしに。
どう反応したらいいのか、イリナも戸惑いの色が浮かぶ。
「ヴィズ……」
喜んでいいのか、それともなにか違うリアクション? でも、ブランシュを選んだ、ってことでいいんだよな? ホッとする。
つまるところそれは、オーロールにとって敗北を意味するわけで。勝ち負けではない、とは自身で言ったが、どこか悔しさもなきにしもあらず。
「そうきたか。なるほど、いいねいいね。うんうん」
あの子も随分と上手くなったようだね。一度くらいは聴いておくべきだったかもしれない。喜びの笑みを浮かべながら、ステージ上を歩き回る。
「……なにかしら?」
自身のまわりをぐるぐると。品定めでもされているかのような気分のヴィズ。読めない。この人。なにを考えている?
不意に立ち止まると、ツカツカとオーロールは惑う少女に近づいて顔を覗き込む。
「ひとつ目的を追加だねー。ヴィズをこちらの世界に引き込むよ。あの子に勝とう、とかってとは別。キミに興味がある」
予定にはなかったけど。個人的な目標があったほうが、やる気も出るってものデショ? そのためにこの子を『使わせて』もらう。
なにやらロックオンされてしまったらしいヴィズだが、あからさまに嫌そうな顔をする。
「困るわね。案外、今の自分が気に入ってるのよ、私。引きずり出さないでもらえる?」
特にここ最近の。ベルやイリナ達と切磋琢磨して、ブランシュと出会って。そういったことを積み重ねてきた今の自分。ピアニストとして上を目指しているわけではなかったけど。ほんの少しだけ。もっと色々と弾けるようになりたい、という欲が出てくるまでに。
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