第8話、不機嫌

 朝起きると、玲喜は自身を抱きしめて寝ているゼリゼを見て一気に頬を紅潮させた。

 互いに裸だったのも起因の一つだが鮮明に残っている情事の記憶が主な原因だ。

 恥ずかしすぎて叫びたい。こんな状況下にいるのは、間違いなく自身が引き起こしたのだから玲喜は余計に恥ずかしかった。

 それと同時に青ざめる。言うつもりはなかったというのに、自ら誘って己の性癖をバラしてしまったのだ。

 それを受け入れたゼリゼももしかしたら同じ性癖なのかもと考えたが、己に誘われてつられてしまっただけのような気がした。

「ほう。てっきり覚えていないとでもほざくかと思っていたが、その様子だと覚えているな?」

 寝ていると思っていたゼリゼがいつの間にか起きていて、玲喜は挙動不審ぎみに視線を彷徨わせる。

「ごめん。本当に……ごめん。悪かったゼリゼ……お前はオレに釣られて過ちをおかしただけだ。忘れてくれ」

 玲喜から精一杯の謝罪と逃げ道を示したつもりだったが、その言葉を聞いたゼリゼの眉が不機嫌そうに顰められ、そのまま組み敷かれた。

「昨夜の事を無かった事になどさせない」

「ゼリゼ?」

 口付けられて舌を絡ませられる。水音を響かせて口内を蹂躙された。

「ぁ……あ、んぅ」

 胸元の突起を指の腹で擦られ、玲喜の体が戦慄く。

「ゼリゼ、何で……。ちょっと、待て……」

「酔っていて良く覚えていないだろう? じっくり思い出させてやる。まだ中に出したモノも残っているだろう?」

 剣呑な空気を醸し出しているゼリゼを止めようと、玲喜は腕を突っ張って肩を押したが、その腕は頭上で一纏めにして片腕で押さえ込まれる。

「ラルも昨夜みたいに誘ったのか?」

 直で名前を出されて玲喜は動揺した。

 普段より落とされた声音が、ゼリゼの機嫌の悪さを物語っている。

「な、んで……」

「お前、ラル・マニアンスの事を知っていたんだろう? 何故隠していた?」

 これ以上ない程に玲喜の目が大きく見開く。

 ——本人なのか? いや、年齢が違う。

「別に隠していたわけじゃ無い。だって年齢が……「黙れ」」

 空いている手で口を押さえつけられて最後まで喋れなかった。

 気まずくて視線を彷徨わせると、ゼリゼが舌打ちした。

 今まで感じた事もないくらいの憤りを向けられている。それだけは確かだった。

「お前を見ていると苛々する。こんな気持ちになったのは初めてだ。どうしてくれようか」

 眉根を寄せて怒気を孕んだ声音で吐き捨てられ苦笑した。そこまで嫌われてしまうなんて思わなかった。

 やはり昨夜の事が引き金となってしまったのだろう。胸が痛くなる。

 ——バカだな、オレ。

 短い間だったけれどゼリゼとの暮らしは楽しかっただけに、嫌われるのはしんどかった。

 口元を覆われていた手を退けられるなり、玲喜は静かな口調で言葉を口にする。

「黙っててごめん。それで気が済むなら、ゼリゼの好きにすればいい」

「ほう。何をされても構わん、と?」

「ゼリゼなら……いいよ」

「その言葉、後悔するなよ」

 肯定したのにゼリゼの機嫌は輪をかけて悪くなった。またゼリゼの地雷を踏み抜いてしまったようだ。

 眉根を寄せる。単なる欲の吐き所にしたいなら好きにすればいいと思った。

 失って困るものは何もない。再開されたゼリゼの手の動きを感じるなり、目を瞑って身を委ねる。

 ゼリゼの形に開かれた内部は、味を占めたかのように喜んで迎え入れた。

 昨夜と同じようにゆっくりと内部を開かれ、前立腺と奥を余す事なく擦られる。

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