第3話「ミナギ先輩との約束」

 俺は入学式を迎えていた。それも一万人の新入生が集められた会場では、目の前の壇上に立って話す校長先生や評議員の代表が挨拶の言葉を発する。それに耳を傾けながらも、俺の興味は端っこに並ばされている四天王に至る生徒に向けられた。その四人は順位に従って並んでおり、四天王だけが贈られる特別な制服を身に纏っている。その光景はまさに憧れを抱かせてくれた。


 そして入学式は終わりを告げる。そこで会場に集まった生徒たちは一斉に教室まで戻って行くのだった。俺もその流れに合わせて教室を目指して行ったのだる。


「やっと入学式が終わったね! 後は教材が配布される予定だよ」


「どこで聞いたんだ? 俺は初耳だぞ」


「そりゃあ先輩に知り合いがいるんでね? そんなに不思議なことでもないわ」


「なるほどな」


 エリカが俺に次の予定を知っている事情を話してもらうことで納得した。そして俺らが教室に到着すると、そこでまた適当に席に座って待つばかりである。


 それから全員が席に着いたのが確認されると、そこでレッドガン先生が次の話を進めた。そこでレッドガン先生は俺らに教材を配布するのに便利な魔法でもある【オブジェクトワープ】を使う。それによって教材がスムーズに配れら、それを空間を広げる魔法が付与されたバッグに限りなく収納した。当校のバッグには無限に広がる空間が形成されているため、幾らでも教科書やノートが入ってしまうのだ。そんな便利な魔法が施されたバッグを配布できるだけの学校だったのが、現時点で俺が通っているところなのであった。


 そして教材が配られた後で、一つずつ長い説明がされる。それを全部終えると、その先からはフリーになり、放課後として扱われた。


「これからどうする? ヒョウマも暇なんでしょ?」


「俺には用事があってな。これから図書室に行かなくちゃいけないんだ。お前らも来るか?」


「もちろん一緒に行きたい! 私も本なら好きなんだ!」


「あのなぁ? 俺は本を見に行くんじゃなくて、先輩と町ア汗をしているの。だから、本が見たいならひとりでどうぞ」


「ごめん! それなら本はまた今度にする!」


 そうやって俺に四人も付いて行くことになった。彼女らにはまだ教えていなかったが、会えば分かるだろうと思っていたので、敢えて説明はしなかったのである。


 そこで俺らが図書室までやって来た時には、自分が目的としていたミナギ先輩はとっくに待ち合わせた場所にいた。そこで俺はすぐに彼女の傍に行って挨拶をする。


「初めましてヒョウマです。これからはお世話になります!」


「あら? 貴方が例の子ね? どうぞよろしく」


 ミナギ先輩はそこで俺に向けて挨拶を返すと、後ろから付いて来た女子を見て、その正体を尋ねて来る。俺はもちろんそれに対して彼女たちを紹介するに至るのであった。


「こちらは俺の友人です。この先で一緒にお世話になろうと連れて来ました。お手数ですが、彼女たちもよろしくお願いできないでしょうか?」


「ふーん? ヒョウマ君ってモテるのね? それも四人を一人で相手するなんて罪な男だわ」


「そんなんじゃありません。ただ彼女たちから声を掛けられただけです」


「「「「どうも」」」」


 そこでミナギ先輩が指摘したことに何の反応も見せなかった四人を見て、何やらにやにやが収まらない様子を窺わせた。そこで俺から一人ずつ紹介して行くと、それにミナギ先輩は喜んで彼女らも混ぜても良いと許可をくれるしかし、ミナギ先輩からは条件付きだった。


「ええっ⁉ ヒョウマの恋人になるの⁉」


「それは急すぎますよ……。さすがに恥ずかしいですって」


「何を言うの。ヒョウマ君を選んだのも理由があるんでしょ? それぐらいで拒否しないのよ?」


「さすがにそこまでする必要はないと思いますよ?」


「ヒョウマ君まで遠慮してどうするの? そこは積極的に絡んで行かないとだよ」


 ミナギ先輩の一言で四人の意思ははっきりとした。さすがの彼女たちであっても、そこまでするつもりはないに決まっているのだ。しかし、ミナギ先輩が出した条件に従わないなら、この四人までは面倒を見ないと断言されてしまう。そこでライネが真っ先にその条件を呑む決断をした。それにミナギ先輩は驚いて、彼女の世話を焼くことを認める。


「良いわね? 確かライネちゃんだったかしら? 今度からはよろしくね?」


「はい! よろしくお願いします!」


「他の三人はどうするの? 条件に従えないなら断るわよ?」


「仕方ないですね」


「分かりました」


「うぅ。そこは観念するしかないよねぇ~」


(マジで言ってんのか? 纏めて四人も恋人にするのか? ミナギ先輩もやり過ぎにもほどがあるぜ)


 そんな風に俺としては困らされてしまう。しかし、四人はミナギ先輩の言ったことを本気にしていた。それに四人の表情から窺えるのは、俺が恋人になることに反対はないと言うことである。まさかここで本気になって恋人になってしまうとは、俺も予想外でしかなかった。


 そしてミナギ先輩の条件を達成した四人も、この先で一緒にお世話になることに決まる。それは良かったのだが、これから恋人として彼女らとはどんな関係を築かなければいけないのか疑問に思った。すると、ミナギ先輩からはそこでカップルとしての決まり事を義務付ける。それがこれから口にすることだった。


「まず初めて会う朝には、必ずぽっぺにキスをすること。もしそれが出来ていなければ、即座に指導を打ち切りにします。良いですか?」


「ええ~⁉ ほっぺにキスするの⁉」


「本格的ね?」


「ちょっと恥ずかしいけど、恋人なら当然だよね?」


「やるしかないわ」


「マジでするのか? そこは断っても良いんだぞ?」


「ヒョウマ君は黙って言うことを聞きなさい! それがなくてどうするの!」


「分かりましたよ……」


 ミナギ先輩によって朝っぱらからキスを受けることが決まってしまった。俺にとっては少し躊躇いがちになってしまうが、ミナギ先輩が決めたことなら仕方がない。彼女の設定に従わなければ、俺も少し危ういかも知れないので、黙って従うことにした。


 そしてミナギ先輩とこの先で指導されるに当たって、どこで修行をするのかを決める。ミナギ先輩が言うには、成績によって修行場を設けてくれるサービスがあるようで、それを狙って行こうと言った意見が出た。それには俺も即座に賛成するに至る。そこでどこにその修行場があるのかを尋ねると、そこでミナギ先輩の懐から取り出した地図を見ながら、位置を確認するのであった。


「ここよ? この場所が私の借りている修行場になるわ。一人が借りてさえいれば、後は誰を誘うが勝手なのよね? だから、私がいるだけで許可は取れたも同然よ」


「なるほど。分かりました。放課後になったらそこに行けば良いんですね?」


「そうよ。そこで待ってるからね?」


 俺らは修行場を教えてもらうと、そこに集まる約束をした。そこでミナギ先輩の指導によって【龍眼】に目覚める修行を施してもらうことになる。さらに他の四人までもが彼女の手によって鍛えられることが決まった。それを受けて俺らはどこまで強くなれるのかが決まるのだ。


 そして俺らの間で今後の内容が定まると、次からそこでお世話になる。俺らにとっては序列六位に位置するミナギ先輩から修行が受けられるのは滅多にないチャンスとして見ているのだった。そこで序列六位であることを四人にも伝えると、その事実に対してかなり驚いた様子を見せる。そして俺の恋人になったことに後悔を背負わないと誓ったミナギ先輩によって、彼女が出した条件が絶対的な効力を発揮させることになるのであった。


 次の日。俺らは朝になって顔を合わせると、そこで接触した順にキスをして来る。ちゃんとミナギ先輩の提示した条件は守られ、それに羞恥心を抱く四人は顔を赤くしていた。


「もう! これは不可抗力だよ!」


「本当だよね? でも、お世話になるには守らないといけない条件だから仕方ないよ」


「だよね~」


「私は別に良いんだ。ヒョウマは強いもん」


「「「ええ~⁉」」」


 そこであの条件が出された時になって真っ先に賛成したライネが自信を持ってそんな発言をする。それに三人は驚くが、そこでライネに続いて俺の恋人になれたことを歓喜していると言い始めた。それを四人で示すことで、密かに思っていたことが明かされたのである。俺はそれをどう受け止めれば良いのか分からないでいると、そこでライネから自分たちにどんな思いを寄せていたのかを尋ねて来た。


「ヒョウマはどうなの? 私たちのことは好きだよね?」


「——え? 急になんだよ」


「好きじゃないの? せっかく恋人になったんだもん。もちろん愛してるよね?」


「あ、あのなぁ……」


 俺が困った様子を窺わせると、そこでリンカの一言によって窮地に立たされることになる。


「襲っちゃおうか? ヒョウマが認めるまで止めないから」


「お? それは良いね? やっちゃおうか?」


「はぁ? 何——うわっ⁉」


 そこで俺は腕を引っ張られてライネの部屋に連れて行かれる。丁度彼女の部屋が目の前にあったので、そこに四人の力で押し入れられるのであった。


 俺が四人の手によってライネが住まう部屋に入れられると、すぐにズボンを下ろされる。そして露わにしてはいけないところを制されてしまうのであった。


 それから彼女たちから下半身を弄られるいじられると、俺はそれによって異様な臭いを放つ。彼女たちは俺の射出した液体を自らの口で制すると、満足そうにしながら解放するのだった。


「凄く濃かったね?」


「やばかった。初めて見たかも」


「生臭いのが癖になるよね?」


「まったくだよ」


 そこで肝心の俺は無理に犯されたことで少し彼女らを嫌悪するようになった。気持ち良く感じたのは不可抗力だったが、障子に言うとエルシャにも同じことをされた経験がある。それがなかったら俺は女性不信に陥っていたところだ。しかし、エルシャの手によって慣れていたので、そこまで苦とは思うはずもなく済まされたのであった。


「行こう? 早くしないと朝の会が始まっちゃう!」


「分かってるよ」


 そうやって俺はぎこちない気分になったのであった。



 そして朝の会が終わった後のことだ。周囲に連中は俺が放つ臭いに敏感な反応を見せた。それが俺にとって少し気になっていたところだが、彼女たちが言うには気にする必要はないとのことである。


 一時間目は魔法学だ。魔法にはそれぞれ属性が伴うのだと始めに教えられた。俺が得意とする魔法は氷属性に分類されている。それと同じでレッドガン先生は話を進行させた。そこで受けた一時間目の授業は、様々な魔法について学べたのである。


 そして放課後になった。俺らは真っ先にミナギ先輩の借りている修行に訪れた。そこにはすでにミナギ先輩がいて、俺らを待ち構えていたのである。


「お? 来たか? ——って、まさか交わった?」


「はい。口で抜きました」


「やるね? 雄の臭いが堪らないよ」


「それは良いから進めましょう」


 俺はミナギ先輩の反応に対してかなり居心地が悪かった。それも無理はない。エリカたちに性器を見られた上に抜かれてしまったのだ。それが何よりも恥ずかしくてしょうがない気持ちにさせたのである。それをこの五人は知らないでいるのであった。


 しかし、この時間帯は主に自身の強化に徹することが出来るので、俺にとっては貴重なのだ。そんな中でミナギ先輩は指導を施す前に魔法技能を試す形を取った。


「まずは君たちの魔法を扱ってどれだけの戦闘が出来るのかを試したいと思う。そこで私と対人戦闘を行って行くよ? 私は基本的に本気は出さない。なので、君たちはそんな私に本気で掛かって来い」


(どうやらどれだけ魔法技能があるのかが試されるみたいだな? 俺でも序列六位に入るミナギ先輩を相手にしたら敵わないのが自然だ。しかし、ここで負けていられるなら今のうちでしかないのである)


 そんな風に内心で思っていると、そこで早速ミナギ先輩が一番手を選ぶ。そこで最初に選ばれたのはライネだった。


「ライネちゃんから始めようか? 私は基本的に手出しはしない。しかし、ある程度の魔法は使うつもりだ。そこで少しでも私に魔法が届けば、序列試験を受ける権限を与えよう」


「まさか私が一番手なの? もちろんやるわ。ここでヒョウマに良いところを見せるんだ!」


「そのやる気には感心するわ。しかし、貴方では私を満たすことは出来ない」


 そして魔法技能のテストが始まった。そこで俺らの前に立ちはだかったミナギ先輩はテストを行うに当たってどれだけの実力なのかが試される。


「では、どこからでも掛かって来な?」


「行きます」


 その時、ライネは魔力を全身に流し込み、魔法の発動に備えていた。そしてミナギ先輩が受ける準備を整えると、そこで早速魔法を発動させる。それにミナギ先輩は防御魔法を施した。


「これでどうだ!」


 そこでライネが電気の出力を加減しながら解き放った。それはミナギ先輩に向かって行くが、それを届く前に途切れさせる。ミナギ先輩が自身の身体を覆い尽くすだけのバリアを張ることで、電撃を防ぎに出た。


「防御魔法? それも完全に防いだ⁉︎」


「それだけ? かなり物足りないわね?」


「まだです!」


 そこでライネが回りながらミナギ先輩の下まで接近すると、そこで隙が出来たところに電撃を放った。しかし、それが届くことはなく、電撃は惜しくもバリアで遮られてしまう。それを受けたライネは電気を拳に纏わせたら、そこで直接殴りに掛かった。


「雷拳!」


 どーん!


 そこでライネが放った殴打はミナギ先輩のバリアに直撃したが、それでも破れる気配はない。しかし、そこから今度は逆の拳で殴って行った。


「はぁっ!」


「そう来るか? しかし、見ての通りよ!」


 ミナギ先輩がバリアを持続してライネからの殴打を防ぐ。その圧倒的な防御を前にライネはなす術もなかった。そこでミナギ先輩から攻撃が下される。


「行くわよ!」


 すると、バリアが消えた瞬間にミナギ先輩の掌から風が起こされる。それはライネを吹っ飛ばして行った。すると、そこで吹き飛ばされたライネはそのまま壁に叩き付けられる。


「きゃぁっ⁉︎」


「そこまで! 大体の実力は計れた。雷魔法の使い手みたいだが、まだまだ魔力量が足りてない。そこでこれからは魔力の増量ご必要なってくるわね?」



「さすがに序列六位には敵わないか……」


 すると、次にミナギ先輩が指名したのはエリカだ。そこで彼女は今の一戦を見て思うところがあったみたいだった。それを踏まえてミナギ先輩に挑んで行くのだと示したら彼女の前に立つ。そしてミナギ先輩でも驚く行動に出た。


「では、始め!」


 その時、エリカが真っ先に水魔法を放つ。それは水流を起こさせる魔法で、一気に辺りを巻き込んで水没させた。それによってミナギ先輩は水に呑まれて行き、バリアでは対処できないでいる。しかし、それでさえもミナギ先輩からしたら攻略できないほどでもないと言わんばかりの行動を取った。


「それならこの魔法で攻略できるわ!」


「なっ⁉︎」


 そこでミナギ先輩はエリカの発生させた水流に対して領域内に作用する魔法を使った。それも自身の周囲に至る水流を纏め上げ、一気に消失させる。一体ミナギ先輩が発動させた魔法の正体とは何だったのか分からない状態でエリカはついに風圧によって吹っ飛ばされた。


「何が起きたの⁉︎」


「恐らく【滅界】だ。自身から半径一メートル先の領域内に及ぶ魔法を無効化させる奴に違いない。これはエルシャも愛用していた魔法だ!」


「そんなぁ! 無敵じゃないのよ!」


「いや、距離を空けて魔法を発動させれば問題ない。しかし、遠距離攻撃を持たない魔導士なら勝利は不可能だ」


「よく知っていたわね? これもエルシャ先生から教わった魔法よ。貴方も使えるでしょ?」


「もちろんです」


「ヒョウマも使えたの⁉︎」


 そこでリンカが驚くと、そこでエリカも風圧によって吹っ飛ばされて終わったことに対して残る三人は警戒するに当たるのであった。しかし、まず【滅界】と【バリア】を攻略しない限りは進展しないのが目に見えている。



 そして次はヒメナが指定された。それを受けて前に出ると、ミナギ先輩から言いたいことが口にされる。それは今度からは初見の魔法しか使わないと断定するということだ。なので、さっき使っていた【滅界】と【バリア】と【風圧】は使わないらしい。それで一体どんな魔法が使われるのかが楽しみになって来た。


「では、始め!」


「行きます!」


 そしたら、地面からいきなり木々が出て来て、それがミナギ先輩に向かって行く。それをミナギ先輩は初見となる魔法を発動させた。


「私が扱う魔法は主に無系統だと説明したが、基本的に他属性も使えるのよね!」


 すると、掌から炎が吹き荒れた。それが鍵を燃やして行き、一瞬にして消失する。けれど、ヒメナはそれでもミナギ先輩の周囲からも木々を生やして拘束を狙った。しかし、それに関しても回りながら炎を放出する。それによって辺りの木々が燃える。そこで近付けない状況が続き、そこでミナギ先輩はそれで攻撃の余地がないと判断して戦闘を終わらせた。


「そこまで! さすがに樹木魔法は攻略されやすいな? しかし、それもこれから強化すれば対抗できるのは間違いないだろう。頑張れ」


「そんなぁ……」


 ヒメナは簡単に攻略されてしまったことに対して困っているような表情を浮かべる。そこで残るは俺とリンカだけだ。そしてどちらが先に選ばれるのかはすでに決まっていた。


「もちろんヒョウマ君は最後よ。私のとっておきで倒すわ」


「望むところです!」


 そしてリンカが前に出ると、そこでミナギ先輩は一度でも使用した魔法を封じられることで、手数が減ってしまうが、それでもあっさり何度も扱うと、それだけで詰まらない一戦になって行くのだと、そんな風に思っていた。そこで炎魔法を扱うと言うリンカは一体どんな一戦を見せてくれるのかに期待がもたらされる。


「では、始め!」


「燃え盛れぇぇぇ!」


 そこでリンカもさっきのミナギ先輩が使っていた炎魔法がそこで発動させられた。しかし、それを今度は当たらないように回避すると、その動きに連れて自らも位置を変えて行く。


「これで決める! 【ブレイジングボール】!」


 リンカにとってそれはとっておきだろう。消費魔力も激しい中で、頭上に炎が収束された球体状になってミナギ先輩に放たれた。しかし、それが通じるわけでもなく跳ね返される。


「何のこれしき!」


 ミナギ先輩は【ブレイジングボール】が放たれた瞬間にそこで黒い穴が現れてすべて呑み込まれてしまう。それは【ブラックホール】と言った魔法であった。


「この穴は異次元に繋がっている。そこに吸い込まれて行くものはすべて無に帰すのだ!」


「そんなぁ! 無効化とか消滅を及ぼす魔法が扱えるなんてやっぱ序列六位は伊達じゃないね!」


「当然だ。あの組み合わせは最強にも相応しかったが、それでもミナギ先輩には上がいた。それが四天王と序列五位に位置する魔導士なんだ」


「強いじゃん」


 その圧倒的な魔法によってこちらの攻撃が一向に当たらないのを見ていると、そこで俺は本気で向かうのが自然だと思っていた。その時、俺にはミナギ先輩ならいの魔法を使うつもりだ。それを使わないうちに倒すのが適作なのである。


「では、最後だ。気を引き締めて取り掛かれ! 始め!」


(合図が出た! 一気に決めるぞ!)


 俺はまず相手の動きを止める策に出た。それは【フリージングゾーン】で、俺を中心にして半径三キロメートル先まで凍らせる魔法だ。これで行動不能にするのが真の目的である。すると、そこでそれを後退しながら自分も魔法に徹する動きを見せた。


「行くわよ! 【領域改変】!」


「畜生!」


 この段階で周囲にあった物質がいきなり姿を消して、それを別のものに変換させた。それは俺が凍らせた領域内に存在する地面を変換させる対象にして、そこから大量の鎖が出る。それを自在に操って俺を拘束したのである。しかし、そこで諦めるに至ることはなく、俺は即座に鎖を凍らせて力任せにちぎった。そして今度は【フリージングブラスト】でミナギ先輩を攻撃する。


「うぉぉぉ!」


「くっ! 手強いな。しかし、序列六位の実力はこんなもんじゃない!」


 すると、それを素早く走って避けると、そこで再び【領域改変】を発動させた。それによって俺の足場が変換させられることで、穴が空いてしまうのだ。そこに落ちて行くと同時に上から再び大量に変換された鎖が凍結させられないように拘束した。


「ぐぅ⁉︎」


 そしてミナギ先輩はこれでお終いだと言わんばかりに降参を求める。


「どうする? まだやる?」


「ま、参りました……」


 そうやって俺はミナギ先輩に敗北した。

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