第4話:初めてのダンジョン
DEOに登録した翌日、大学の講義が終わると、俺はすぐにダンジョンに向かうことを決めた。最初の挑戦だ。頭の中は、ダンジョンでの戦闘に対する期待と少しの不安でいっぱいだったが、俺には確かめなければならないことがあった。異世界で培ったスキルが、現代のダンジョンでどれほど通用するのか。
向かうのは大学から電車で数駅ほどにある東京郊外の羽村市に位置する「黒石の洞窟」。移動中、これからの戦いに備え頭の中でイメージを描いていた。友人たちが「今日は飲みに行こう」と誘ってきたが、丁重に断り、ダンジョンの入り口へ向かう。異世界の経験があれば、Eランクダンジョンなんてものは通過点に過ぎない。俺はそう信じていた。
各ダンジョンには専用の「ダンジョン管理事務所」が設置されており、ダンジョンの運営・管理を行っている。探索者たちはダンジョンへの入場、退出、手続きの際に必ずこの事務所を経由することになっている。
ダンジョン管理事務所に着くと、受付の前にはすでに何人かの探索者がいた。パーティを組んでいる連中がほとんどだ。
俺はダンジョンへ入場するべく受付で入場手続きをしようとしたところ、DEOのスタッフが俺の登録証を確認し、スキルなしであることを指摘してきた。
「スキルなしですね……。パーティは組んでいないんですか? ソロで行くのは危険ですよ。初回なら誰かと組んで探索した方が安全です」
その言葉に、周りの探索者たちが俺をちらりと見やり、ひそひそと話し始めた。「スキルなしでソロ?」「正気の沙汰じゃない」「すぐ戻ってくるだろうな」。冷笑が聞こえる。だが、そんなことはどうでもいい。
「ソロで大丈夫です」
俺はきっぱりと伝えた。スタッフは驚いた表情を浮かべたが、すぐに「気をつけてくださいね」とだけ言い、俺をダンジョンに送り出した。周りの冷ややかな視線を無視して、俺はダンジョンへと足を踏み入れた。
ダンジョンの中は、ひんやりとした空気に包まれていた。暗い通路が奥へと続いているが、懐中電灯で進むべき道は十分に見える。魔物の気配も感じるが、恐れることはない。異世界での経験を通じて、俺の体は戦いに慣れている。
最初に現れたのは、スライム。異世界で何度も戦ってきた敵だ。俺は一息つき、手をかざして風の魔法を練り上げる。
「風刃斬!」
風の刃がスライムを一瞬で切り裂いた。異世界でのスキルがこの現実世界でも問題なく発動することが確認できた瞬間だ。俺は胸を撫で下ろしながら、さらに奥へと進む。
次に現れたのは、ゴブリンの集団だった。彼らは粗末な棍棒を振り上げて襲いかかってきたが、俺にとっては相手にすらならない。異世界で鍛えた剣技と魔法剣技を駆使し、次々と撃破していく。
「流水斬!」
鋭い水の刃がゴブリンたちを切り裂き、その場に倒れる。彼らを倒すたびに、いくつかのドロップアイテムが手に入った。ゴブリンの牙、スライムの液体――どれも市場で売れるものだ。
「思ったより簡単だな……」
俺は笑みを浮かべ、ドロップアイテムを拾いながらさらに進んだ。通路を進み、魔物たちを倒しながら、ドロップアイテムを確保していく。これが現代のダンジョン探索というものか。異世界のそれに比べれば、手ごたえは今のところ軽い。
しばらく探索を続けた後、ふと立ち止まり、今回の目的を思い返す。異世界でのスキルが通用することは確認できたし、ドロップアイテムもある程度集まった。今回は無理をせず、ある程度の階層で引き返すことにした。
「ここまでにしておくか」
俺はダンジョンの出口へと向かい始めた。次はこのダンジョンを正式に攻略して、攻略証を手に入れるつもりだ。そのためにはボスを倒さなければならない。今の俺ならそれも問題ないだろう。
ダンジョンの出口に着くと、受付で再び手続きを行った。出迎えてくれたスタッフが俺を見て、少し驚いた様子で言った。
「無事に戻りましたね。どうでしたか? スキルなしでソロはやはり危険だったのでは?」
俺は軽く笑って答えた。
「まあ、今回は様子見です。でも、次は本気で攻略します」
彼は驚きつつも、「気をつけてくださいね」とだけ返し、俺を送り出した。
ダンジョンの管理事務所内には、ドロップアイテムの買取窓口がある。探索者たちはここで得たアイテムを売り、報酬を得るのが基本だ。俺も手に入れたアイテムを見せ、買取手続きを進めた。
「こちらのアイテムを売却したいのですが」
窓口のスタッフがアイテムを一つずつ確認し、しばらくしてから金額を提示した。
「合計で1万2千円になります」
それほど大きな金額ではないが、初回としては十分だろう。俺は現金を受け取り、事務所を後にした。
帰りの電車に揺られながら、俺は次のステップについて考えた。次はこのEランクダンジョンを正式に攻略し、ダンジョン攻略の証を手に入れることが目標だ。その証を手にすれば、次のDランクダンジョンに進むことができる。
異世界でのスキルがこの現実でも使えるという事実は、俺にとって大きな自信となった。次に進むのは時間の問題だ。
「次は、ボスを倒して攻略証を手に入れるか」
そう心の中で決意を固めながら、俺は次の挑戦に向けて気持ちを引き締めていった。次回の挑戦が、俺の冒険の新たな一歩となるはずだ。
次の更新予定
スキルなしの探索者 ~実は異世界のスキルで最強~ りおりお @kgo1974
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