第23話 晴信時代到来 海の平の戦い、信濃攻め
翌朝、戦場近くの森の中にて
義輝(息を切らしながら大井夫人のもとへ駆け寄る): 「大井夫人、大変です。侍大将・渡辺が兵を集めています。どうやら敵陣へ総攻撃を仕掛けるつもりのようです。」
大井夫人(眉をひそめて): 「渡辺が…?なぜ、彼は昨日、戦を終わらせることに協力すると言ったはずです。」
義輝: 「ええ。しかし、彼の側近たちが煽ったのか、敵の動きがあまりにも速いと感じているようです。焦りからかもしれません。」
大井夫人(静かに立ち上がり): 「渡辺の心は、まだ戦いの恐怖に縛られているのですね…。今、彼を止めなければ、また血が流れることになる。」
義輝(少し不安そうに): 「でも、夫人…彼を止めることができるでしょうか?渡辺は既に決断してしまったようです。」
大井夫人(決意を込めて): 「決断とは常に変えられるものです。彼が自らの心に耳を傾ける限りは…。行きましょう。」
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渡辺の陣営にて
渡辺(激高した声で部下たちに指示を飛ばす): 「準備を整えろ!夜明けとともに、総攻撃を仕掛ける!敵を一気に潰すのだ!」
側近1: 「侍大将、万全です。敵の防衛線は脆弱です。この一撃で勝負を決めましょう。」
渡辺: 「そうだ、これで終わらせる。俺たちが勝つためには…。」
その時、大井夫人が陣営に現れる。彼女の姿に兵たちは一瞬動揺するが、すぐに警戒を解く。
大井夫人(落ち着いた声で): 「渡辺、これがあなたの望んだ結末なのですか?」
渡辺(苛立ちながら): 「大井夫人、あなたは理解していない!敵はこの隙を突いて、こちらを攻め滅ぼすつもりだ!今攻撃しなければ、俺たちがやられる!」
大井夫人: 「それが本当にあなたの信じる未来ですか?敵を倒すことで、本当にこの戦いが終わると思いますか?」
渡辺(声を荒げて): 「何を言っている?戦いで敵を倒さなければ、平和は訪れない!」
大井夫人(穏やかに): 「平和とは、敵を倒すことではなく、心の中の恐怖を超えることです。渡辺、あなたの本当の恐怖は敵ではない。あなた自身の心の中にあるのです。」
渡辺(戸惑いながら): 「俺の…心?」
大井夫人(一歩前に進み): 「そうです。恐怖が人を狂わせ、戦いを永遠に続けさせる。あなたは、何のためにこの戦いをしているのですか?大切なものを守るためではないですか?」
渡辺(沈黙し、考え込むように目を伏せる): 「……俺は…。確かに、大切なものを守るために戦ってきた。だが、いつからか、それが見えなくなっていたのかもしれない。」
大井夫人(優しく): 「まだ遅くはありません。あなたが戦いを止めれば、多くの命が救われます。そして、未来を守るための本当の道が開かれるのです。」
渡辺(大きく息を吐き、重く頷く): 「……わかった。俺が…戦を止めよう。」
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その夜、大井夫人と渡辺は敵陣の大将との和平交渉を行うため、敵陣に向かうこととなる。
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敵陣の幕舎にて
敵将・神田: 「ほう…お前が渡辺か。まさか、和平交渉などを申し出てくるとはな。だが、お前のような侍の言葉など、信用できん。」
渡辺(静かに): 「俺は嘘をつかない。この戦いに終わりを告げるために、今日ここに来た。」
神田(不敵に笑う): 「終わりだと?終わりが来るのは、お前たちの命運のほうだろう。」
その時、大井夫人が一歩前に出る。
大井夫人: 「神田、あなたもまた、この無意味な戦いに囚われているにすぎません。互いに命を奪い合うことが、未来を築く道だと本当に思っていますか?」
神田(目を細めて): 「ふん…何者だ?お前はただの女ではなさそうだが。」
大井夫人(穏やかに): 「私の名は大井。白魔術を操る者です。あなたの心を浄化し、真の平和を見せるために来ました。」
神田(驚きと疑念が混じった表情で): 「白魔術だと?何の戯れ言だ。だが…面白い。どれほどの力を持つか、見せてもらおう。」
大井夫人は静かに手をかざし、光が神田を包み込む。神田は一瞬、己の過去の記憶に触れる。幼い頃の家族、戦火で失われた故郷、失った仲間たち――そのすべてが目の前に現れる。
神田(目を見開き、動揺して): 「これは…俺の記憶か…?俺は…何のために戦っていた…?」
大井夫人(優しく): 「あなたは本当に守りたいものを忘れてしまっていたのです。今なら、戦わずに守る道を選べます。過去を悔やむのではなく、未来を築きましょう。」
神田(震える声で): 「……わかった。俺は…もう戦わない。お前たちの言う通り、この戦は終わりだ。」
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こうして、大井夫人の白魔術によって、河東の乱は終息に向かう。敵味方が手を取り合い、新たな平和の道が開かれる。
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この続きでは、戦いの終息後に訪れるそれぞれの登場人物の心情や未来への決意、またはさらに大井夫人がどのようにして次なる試練に挑むのかが描かれることでしょう。
信虎の追放から数日後、甲斐国は新たな時代を迎えていた。民衆の間には安堵の声が広がり、晴信(後の武田信玄)の治世への期待が高まる。信虎の強権的な統治に苦しんでいた領民たちは、次々と晴信の下に集まり、協力を誓った。
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場面:甲府城
家臣団が集まり、晴信の新しい政の方向性について話し合っている。信方をはじめ、忠臣たちがそれぞれの役割を確認する中、緊張感が漂う。
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板垣信方「信玄様、まずは民の復興を第一に考え、農政改革に着手すべきかと存じます。信虎様の下では、重税に苦しむ農民が多く、荒れた田畑も少なくありません。」
晴信「そうだな。父上の治世で痛めつけられた民には、まずは食糧と安全を保障せねばならん。だが、それだけではこの国を守ることはできぬ。外敵への備えも怠れん。」
重臣・甘利虎泰(陣内孝則)「信玄様、その通りです。しかし、軍備の充実には財政が必要です。信虎様が築いた領土拡大の基盤を維持しつつ、農民たちの信頼を回復するための時間が求められるでしょう。」
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晴信は深く頷き、慎重に次の言葉を選んだ。
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晴信「板垣、甘利、皆の意見を聞いて思ったことがある。民が豊かになり、領地が安定してこそ、我らは強くなれる。まずは、この甲斐を安定させ、外敵を迎え撃つ準備を整えよう。これからは、戦に依存せぬ国造りを目指す。」
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家臣たちは一斉に頷き、新しい時代の幕開けを実感する。武田家は、かつての父信虎の時代とは異なる方向へと歩み始めた。晴信のもと、甲斐の国は次第に強大な力を持つようになり、彼の名は後に「風林火山」として戦国時代に轟くこととなる。
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場面:信虎の駿河への道中
信虎は馬に揺られながら、かつての領地を振り返っていた。自らの追放という結果を受け入れたものの、内心では複雑な思いが渦巻いていた。
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信虎(心の声)「晴信、お前にこの国を任せる日が来るとはな…。だが、あいつがこの甲斐を守り抜けるかどうか、まだ分からん。俺のやり方が間違っていたとは思わんが、今はもう、何も言えん。」
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信虎は小さくため息をつき、駿河へと続く山道を静かに進んでいった。
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物語はここで一つの区切りを迎えるが、晴信の挑戦はまだ始まったばかりであった。新たな戦国時代の荒波の中、武田家の未来は、晴信の手腕に委ねられることになる。
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