第11話 八面大王の気配
有明山で八面大王の不気味な気配を感じた松と竹は、互いに手を取り合い、緊張した面持ちで村へ戻る道を急いだ。梅はまだこの世に生を受けていないが、松(13歳)と竹(8歳)は、まるで母大井夫人のように強く、そして互いを思いやる心を持っていた。
### 山からの帰路
その日、空には薄い雲がかかり、陽は山の向こうに沈み始めていた。松は妹の竹を守るように歩みながら、ふと振り返ると、有明山の影がどこか異様な静けさに包まれていることに気がついた。
**松**:「竹、大丈夫?もう少しで家に帰れるからね。」
**竹**:「うん…でも、あの石、不思議だったね。お姉ちゃん、あれはなんだったの?」
竹の瞳には好奇心と少しの不安が混じっていた。松も何か不穏なものを感じていたが、妹を不安にさせまいと笑顔を作った。
**松**:「たぶん、古い石で何かの記念品だったのよ。大丈夫、もうすぐお母様のところに戻れるから。」
しかし、松の心の中では、有明山で感じた八面大王の気配がどうしても消えなかった。母である大井夫人に相談すべきか、それともこのまま忘れた方がいいのか、迷いながら二人は村へと急いだ。
### 大井夫人との会話
家に戻ると、大井夫人は夕飯の準備をしながら二人の帰りを待っていた。大井夫人は温かく微笑み、二人の顔を見て安心した様子を見せた。
**大井夫人**:「おかえりなさい、松、竹。今日はたくさん遊んだのね。」
**竹**:「うん!でもね、お母様、変な石を見つけたんだ。光ってて、なんだか怖かった…。」
竹は無邪気にその体験を語り始めたが、松は母を心配させたくない思いから、その話をすぐに打ち消した。
**松**:「ただの光の反射だったと思います。それよりも、竹はすごく元気に遊んでましたよ。」
大井夫人は少し心配そうな顔を見せたが、松の言葉に微笑みを浮かべ、話題を変えることにした。
**大井夫人**:「そう、なら良かったわ。でも、これからはあまり遠くには行かないようにね。有明山には古くからの言い伝えがあるから、気をつけなさい。」
松は母の言葉に頷きながらも、有明山のことが頭から離れないままであった。
### 不安な夜
その晩、松は寝床に入りながら、今日の出来事を振り返っていた。八面大王の気配は本当にあったのか、それともただの思い過ごしだったのか。妹の竹は既に眠りについており、松だけが目を開けて天井を見つめていた。
ふと、窓の外から微かな風の音が聞こえてきた。それはまるで山の中から遠い叫び声のように聞こえ、松は身震いした。
**松(心の声)**:「やっぱり、何かが起こっているのかもしれない…。明日になったら、お母様にきちんと話そう。」
そう心に決めた松は、ようやく瞼が重くなり、眠りに落ちていった。
### 翌朝の決意
翌朝、松は早くに起き出し、大井夫人に昨晩の不安を打ち明けた。
**松**:「お母様、昨日の山でのこと、やっぱりおかしいんです。何かが、八面大王の気配のようなものが…。私たち、何かよくないものを感じたんです。」
大井夫人はその言葉に耳を傾け、少しの沈黙の後、静かに頷いた。
**大井夫人**:「松、あなたはもう大人のようにしっかりしているわね。有明山には、確かに古い言い伝えがあるわ。八面大王の気配を感じたというのなら、何かが動き出しているのかもしれない。でも、恐れることはないわ。私たちは家族で力を合わせて、この村を守り抜くから。」
松は母の言葉に勇気をもらい、決意を新たにした。これからどんな困難が訪れても、母と妹を守るために、自分がしっかりしなければならないと心に誓った。
次の章では、八面大王の影響が次第に村に広がり、松と竹、そして大井夫人が巻き込まれていく中、信虎もまたその謎に向き合うことになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます