第10話 姉妹の冒険
### 大井夫人の娘たちの遊び
安曇野の有明山での八面大王との出会いから数日後、平穏を取り戻した山麓の村。大井夫人は、戦の準備に追われる信虎を支えながらも、娘たちとの時間を大切にしていた。彼女の娘、**松(13歳)**、**竹(8歳)**は、無邪気に遊びながら母の目を盗んで小さな冒険を楽しんでいた。
### 有明山の麓で
その日、松、竹は村外れの有明山の麓まで足を運び、青々とした木々の間で遊んでいた。初夏の暖かい陽射しが彼女たちの笑顔を照らし、風に乗って草花の香りが漂う。姉の松が優しく妹たちを見守りながら、少し離れた場所で摘んだ花を束ねていた。
**竹**:「お姉ちゃん、これ見て!すごく大きな葉っぱを見つけたよ!」
竹は手にした大きな葉を頭に乗せて、まるで冠をかぶった王女のように振る舞ってみせた。
松は微笑みながら、摘んだ花と葉っぱで妹のために小さな冠を作り始めた。竹は嬉しそうに跳ね回り、完成した冠を頭にのせると、まるで森の中の妖精のように楽しそうに舞い始めた。
### 姉妹の絆
**松**:「竹、あまり遠くに行かないでね。お母様に叱られるわ」
松は心配そうに妹たちに声をかけたが、竹は山の中の不思議な木々や動物たちに夢中になっていた。竹は、木の根元に見つけた奇妙な石を拾い上げると、梅に見せながらその不思議な模様を眺めていた。
**竹**:「この石、なんだか特別な感じがするね」
**松**:「宝物かもしれない!お母様に見せよう!」
松はそんな竹を見守りながら、妹の無邪気さに微笑んだ。彼女自身も、まだ13歳とはいえ、母の大井夫人を支えながら日々の生活を守り続ける責任を感じていた。しかし、こうして妹と一緒に過ごす時間は、松にとっても大切なひとときであった。
### 八面大王の影
その時、ふいに風が強くなり、周囲の木々がざわめき始めた。竹が拾った石が突然光り出し、姉妹は驚いて手を離した。石は地面に落ちると、そこからぼんやりとした光の輪が広がり、まるで八面大王の気配を感じさせるかのようだった。
松は急いで妹たちを守るように立ちはだかり、慎重にその場を見つめた。
**松**:「竹、後ろに下がって。何かが起こっている…。」
しかし、すぐにその不思議な光は消え、風も穏やかになった。松は胸を撫で下ろし、再び妹の手を取って、村へ帰ろうと声をかけた。
**松**:「今日はもう帰りましょう。このことはお母様にお話ししなければ」
### 家路へ
二人は手をつなぎ、有明山の麓を後にした。道中、二人はまだ冒険の余韻に浸りながら、次にどんな楽しいことをしようかと話し合っていたが、松はどこか不安な気持ちを抱えていた。八面大王の気配を再び感じた今、何か大きな変化が近づいているのかもしれない。
しかし、それでも姉妹の絆は強く、どんな困難が訪れても乗り越えることができるという確信を、松は静かに胸に抱いていた。
次の章では、八面大王の影響が徐々に村に現れ、信虎の戦に巻き込まれていく姉妹たちの運命が描かれます。
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