こんな大河ドラマが見たい③ 『武田信玄の夫人、三条殿』

第9話 信濃諏訪攻め

享禄元年（1528年）の信濃諏訪攻めは、武田信虎にとって大きな試練となった。彼は甲斐の統治を確立するため、さらに信濃の領土を拡大しようとしていたが、神戸・堺川合戦において諏訪頼満・頼隆の連合軍に手痛い敗北を喫した。この敗退は信虎の武将としての誇りに傷をつけるだけでなく、彼の今後の戦略に重大な影響を及ぼすことになる。

### 合戦前夜

信虎は、甲斐を離れ信濃へ向かう道中、兵士たちと共に宿営していた。彼の側には、常に彼を支える大井夫人の存在があった。大井夫人は、政治的な助言をするだけでなく、信虎の気持ちを支える存在でもあった。

**大井夫人**：「殿、先の戦での敗北は痛手でございますが、決して諦めてはなりませぬ。信濃の地を我が手に収めるためには、諏訪を制する必要があります。」

**信虎**：「わかっておる。しかし、諏訪頼満の勢力は予想以上に強大だ。奴を甘く見ておったのは、私の過ちであったかもしれぬ。」

その時、信虎は彼の武田家の重臣たちと共に、次なる策を練っていたが、彼らの士気は高くなかった。特に、先の敗北による打撃は大きく、兵士たちの間には不安が広がっていた。

### 扇谷上杉氏との関係強化

一方で、信虎は軍事的な失敗を補うため、政治的な同盟を強化する必要があった。彼は享禄3年（1530年）、扇谷上杉氏の当主・上杉朝興の斡旋で、山内上杉氏の前関東管領である上杉憲房の後室を側室として迎えることを決めた。この縁組は、信虎にとって戦略的なものであり、上杉家との結びつきを強化し、後北条氏との対立を乗り越えるための手段だった。

**信虎**：「この縁組は、武田家にとって大きな意味を持つ。後北条氏との対立が深まる中、上杉家との関係を強化することで、我らの勢力をさらに拡大せねばならぬ。」

この動きにより、信虎は政治的な足場を固めつつも、後北条氏との戦いは依然として続いていた。

### 八坪坂の戦い

信虎は、扇谷上杉氏と連携を図り、相模国の後北条領へ侵攻する計画を立てた。彼は小山田氏を関東へ派遣し、北条領の要所である八坪坂（現在の上野原市大野）で戦を仕掛けた。しかし、この戦いもまた武田勢にとって厳しいものとなった。

北条氏康率いる精鋭たちは、八坪坂で小山田勢を待ち伏せし、圧倒的な軍事力をもってこれを打ち破った。甲相国境での戦いは、信虎にとってさらなる屈辱となった。

**信虎**（心の中で）：「なぜだ…なぜ、こうもことごとく失敗するのか。」

彼は、敗北の原因を探りながらも、次なる戦いへの準備を進めることを決意した。

### 戦略の見直しと信虎の成長

このような幾度にも渡る敗北を経験した信虎であったが、彼はその度に自らを見つめ直し、戦略を練り直していった。彼は軍事力だけでなく、政治的な手腕や同盟の重要性を痛感し、戦国大名としての成長を遂げていく。

信虎の甲斐統治は、度重なる挫折と試練の連続であったが、彼の不屈の精神は決して揺らぐことはなかった。そして、その後、彼は武田信玄へと家督を譲り、さらなる武田家の隆盛を築く土台を作り上げていくのであった。

この時期の信虎の苦闘と葛藤は、後に続く信玄の躍進に大きな影響を与えるものであり、武田家の歴史においても重要な転機となったのである。

この物語のキャストを考える際には、各キャラクターの性格や立場に合った俳優を選ぶことが重要です。以下に、主要な登場人物のキャストを提案します。

### 1. **武田信虎**

- **俳優**: 柴田恭兵

- **理由**: 武田信虎は力強く、戦国大名としての威厳が求められる人物です。柴田恭兵はその重厚な存在感と演技力で、信虎の剛直さや葛藤を表現できる俳優として適任です。

### 2. **大井夫人（信虎の正妻）**

- **俳優**: 風吹ジュン

- **理由**: 大井夫人は知性と強い意志を持ち、信虎を支える女性です。風吹ジュンは、知的で気丈な女性を演じるのが得意であり、信虎の右腕としての役割をしっかり表現できるでしょう。

### 3. **諏訪頼満**

- **俳優**: 薬丸裕英

- **理由**: 頼満は信虎に対抗する力強いライバルです。やっくんは、威厳ある敵役として信虎と対等に張り合う強さと存在感を持つ俳優であり、戦略家としての頼満を説得力を持って演じられるでしょう。

### 4. **上杉朝興**

- **俳優**: 草彅剛

- **理由**: 上杉家を代表する存在として、信虎との外交的な駆け引きが求められる役柄です。草彅剛は、穏やかでありながら、しっかりとした重厚な演技を見せることができ、上杉家の当主としての風格を演じられるでしょう。

### 5. **上杉憲房の後室（側室として信虎に迎えられる）**

- **俳優**: 中山エミリ

- **理由**: 若く美しいが、強い意志を持ち、政治的な役割も果たすこの役に、中山エミリの持つ凛とした強さと魅力がぴったりです。彼女は、上杉家との縁組を通じて信虎との関係を築く重要な役どころを演じられるでしょう。

### 6. **北条氏康**

- **俳優**: 堺雅人

- **理由**: 氏康は若くして北条家を率いるカリスマ的な武将です。堺雅人の落ち着いた演技と、鋭いカリスマ性は、後北条氏のリーダーとしての氏康の姿にぴったりです。

### 7. **小山田氏**

- **俳優**: 田口浩正

- **理由**: 小山田氏は信虎の家臣でありながら、甲相国境での戦いで敗退するキャラクターです。田口は、忠義と武士の誇りを持ちながらも苦境に立たされる役を感情豊かに演じられる俳優です。

これらのキャストは、戦国時代の緊張感あふれるドラマにふさわしい個性を持っており、物語の重厚な展開をしっかりと支えることができるでしょう。

### 安曇野の有明山に八面大王出現

時は戦国時代の末期、甲斐の武田信虎が信濃へと進軍し、各地で激しい戦が繰り広げられていた。その一方で、安曇野の有明山では長年語り継がれてきた伝説が再び動き出そうとしていた。古代の怪物、**八面大王**が再びその姿を現すという兆しが感じられていたのである。

### 山麓の不気味な気配

安曇野の村々では、山麓から響く奇妙な音や突然の霧が立ち込める異変に村人たちは恐れおののいていた。古老たちはこれが八面大王の復活を告げるものだと囁き、武装して山に近づかないよう警告を発していた。

しかし、時勢は乱世。武田信虎の進軍が安曇野に迫る中、村人たちは恐怖と戦いながらも、その正体を確かめようとする者もいた。そんな中、**大井夫人**は信虎の命を受け、山の異変を調査するため有明山へ向かうこととなった。

### 八面大王の出現

大井夫人が山中を進んでいくと、周囲に漂う霧が一層濃くなり、重々しい気配が立ち込めた。その時、霧の中から巨大な影が現れた。八面を持つその恐ろしい姿は、まさに伝説に語られる八面大王だった。

**八面大王**：「人間どもよ、この地を荒らすことは許されぬ。お前たちの争いにより、この山の力は弱まっている。私は再び目覚め、この地を守るために立ち上がる。」

大井夫人は恐れを抱きながらも、己の使命を全うするため、刀を手に立ち向かう決意を固めた。彼女は八面大王に向かって毅然と告げた。

**大井夫人**：「我が主、武田信虎公はこの地を守るために戦っている。あなたの力を借りることができれば、共に乱世を終わらせることができるはずです。」

### 戦いと協力の道

八面大王は大井夫人の言葉に一瞬動揺するも、その姿勢を崩すことなく、力を見せつけるために周囲の山々に激震を走らせた。大地が揺れ、木々が倒れ始める中、大井夫人は冷静に大王の隙を見極め、斬りかかる。

しかし、八面大王の圧倒的な力の前に大井夫人は劣勢を強いられる。だがその時、彼女の真摯な思いに応えるように、有明山の神々の力が彼女に宿り始めた。

**大井夫人**（心の中で）：「これが山の神々の力…私が倒すべき相手ではない。共にこの地を守るための力を手に入れるのだ。」

### 共闘の誓い

大井夫人は再び八面大王に向き合い、刀を下ろし、静かに語りかけた。

**大井夫人**：「あなたと私たちは敵ではない。この地を守るために、私たちは力を合わせなければなりません。」

八面大王はしばしの沈黙の後、ついにその巨大な頭を縦に振り、共に安曇野を守るために手を取り合うことを誓った。その瞬間、周囲に漂っていた不気味な霧は晴れ、有明山は再び静寂に包まれた。

### 安曇野を守る力

こうして、大井夫人と八面大王は共に安曇野を守る力を得た。彼女は信虎の元へ帰り、山の神々との新たな盟約を報告。これにより、信虎はこの地を守り抜くための強大な力を手に入れることとなる。

戦国の嵐の中、八面大王の力を得た武田家の勢いはさらに増し、安曇野の地は新たな時代を迎えるのであった。

次の章では、八面大王と共に武田信虎がいかにして安曇野を守り、北条氏綱や諏訪頼満らと戦い続けるのかが描かれます。