エピローグ


 あたしがあいつに抱かれたのは、あいつがサクラって子と付き合う少し前だった。



 あたしとサクラって子には、あいつとセックスをした時期としての大きな差はない。



 付き合ってる訳でもないのに、一度抱かれたってところも同じ。



 だけどあいつはサクラって子を選んだ。



 あいつの周りには他にもたくさん女がいたのに、あのサクラって子を選んだ。



「チャンスの神様には前髪しかない」


 そんな感じの言葉を聞いた事がある。



 詳しくは知らないけど、どっかに「チャンスの神様」ってのがいて、どっかから来るその神様の前髪を掴むといいらしい。



 まあその「前髪を掴む」ってのが、「チャンスを掴む」って意味らしくて、つまりがチャンスを掴む機会っていうのはほんの一瞬だから、その機会を逃すなって感じの事を言いたいらしい。



 サクラって子は、その「チャンスの神様」の前髪をしっかりと掴んだ。



 だからあたしは聞いてみたい。



 あたしには分からないから教えて欲しい。



 目の前に現れた、「チャンスの神様」の、その前髪の掴み方を。



 前髪を掴まなきゃいけないって分かってるのに、あたしにはその掴み方が分からないから教えて欲しい。



 ただ、今更それを知ったところで、どうしようもない事ではある。



 サクラって子がいる以上。



 あたしにチャンスはないんだから。





  ノーチャンス 完

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ノーチャンス ユウ @wildbeast_yuu

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