第59話 そして、宴の後 3
児島市内の親族の家に一人で住む大山洋子嬢は、同僚で先輩でもある中田信子嬢に佐藤大勢青年とともに送られ、その起居する宅へと戻った。その家は児島駅よりやや××院に近い。何なら歩いて行っても問題ないほどの距離である。彼女は翌日少し遅めの勤務である。彼もまた、朝は遅めに戻ってくるように言われている。
彼女の家にも自家風呂はある。薪を焚く必要はない。しかもシャワーもつけられている。程なく風呂が用意できた。
「一緒に入ろ!」
誘ったのは彼女のほうだった。眼鏡の奥の目に小悪魔でも宿っているような、それこそハートマークをいくつか付けたくなる呼びかけ。こういうときの彼女は相手が年下の幼馴染であることもあってか、積極的である。
「うん。でも、そんなことしたら」
そんなこととは何かはあえて述べない。彼女の答えはこう。
「大丈夫。タイセ君が来るの、わかっていたから」
彼女はゴム製のとある製品の箱を取出した。
「そのときはそのとき。いっしょに、ね」
思わせぶりを匂わせつつ、彼女は件の箱を置いて彼を連れて風呂場に連れ出す。彼女は眼鏡を外した。もう我慢できなくなったのか、彼は軽装を素早く解いた。裸眼になっても彼の急所はよく見えている。彼女は近視ではあるのだが、裸眼で眼鏡は確かに必要なものの、極度に視力が悪いわけではない。眼鏡で矯正すれば両眼とも1.5くらいになる。ともあれ、女の方が服の着脱には男より一般に時間がかかるもの。彼女もまた、例外ではない。
「ね、これ、外して。欲しいんでしょ、洋子が」
胸当ての留め具を、青年は小悪魔の求めるままに外した。
「ほらぁ~、こ、れ、も!」
甘えるような声で求められたことを、彼はていねいにやさしくこなした。どちらも生まれたままの姿となり、適温となった湯の中へかけ湯をして入った。
「最近会えてなかったから、今日はもう」
1歳年上の彼女の唇を、彼は優しくふさいだ。
「しっかり身体、洗っとこう」
そう言って佐藤青年は湯船を出て体を洗い始めた。彼女もそれに続く。
「ほら、ここちゃんと洗わなきゃ」
彼女が相手の急所付近に石鹸をつけ、やさしくきれいにする。大きくなるまいとするけなげな努力が、泡とともに消えていく。
「洋子のも、ちゃんとやって」
彼もまた、相手の望むままに彼女の秘密の花園一帯をやさしく清掃した。こちらにもまた、泡の中に別の液体が混じり込んでいく。
再び湯船につかってほどほどになったところで、彼らは裸のまま今に戻った。
裸のまま、彼女が冷蔵庫から作り置きの冷たい麦茶を持ってきた。それで少し涼んだ後、彼女は布団と毛布を一組、それに枕を二つ出した。
「タイセ君の、大きく固く、な~れ!」
彼女は眼鏡をかけたまま彼の急所をしばし舌で舐めほぐし、口にくわえた。眼鏡をかけたままの彼女の姿だけでも、彼の身体は元気になる。彼女の舌は急所の下の丸みを帯びた部分へ赴き、その丸みを口に吸う。たまりかねた青年が一言。
「洋子ちゃん、横になるから上に乗って後ろ向いて」
「しっかり愛して、陽子のも」
「これだけやられたら、やり返さなきゃ。さっき拭いたのにもう濡れているよ」
あとは言わぬが花であろう。お互いのそういう部分を互いに舌で攻撃し合った後はいよいよ一つに。彼女が彼を鍛えて防護服を被せたのを合図に、二人はいつになく激しく互いを求め合った。男女平等に相手を激しく求め合う二人。彼女の買って来たゴムのいくつかが、役目をしっかり果たしてくれた。
そして、翌朝。5時過ぎに共に目覚めた二人は、そのまま朝からもう一度男女の格闘を始めた。彼にとっては眼鏡をかけていない彼女もまた魅力の一つ。眼鏡をかけていない彼女をじっくり見られるのは、親族以外では彼くらいのもの。朝から彼は元気そのもの。彼女は自らの液体を醸し出しつつ、相手のものをむさぼり取るかのように彼の本能からの要求を、自ら被せた防護服にすべて吸わせた。
約1時間近く一つになった後、朝風呂へ。昨晩から今日までの汗と体液をすべて流し切り、窓を開けて芳香と悪臭を混ぜ合わせた空気をすべて外へ解放する。
朝の爽やかな海風が、彼女の家に吹き込んで来る。
「海からの風を浴びると、何だか何億年前の生命体の記憶がよみがえってくるみたいだ。古生代の頃の魚類や両生類みたいに、ね」
佐藤青年は高校時代理系クラスにおり、物理の他化学を選択していた。だが、子どもの頃から生物や地学の分野にも興味を持っていた。工学部なのでそれが直接活かされているわけではないが、趣味としてその手の本を読むこともままある。
裸体のまま再び眼鏡をかけた洋子嬢、彼の言葉を自らの心に問いかける。
「私たち、何億年も前も、こんな形で交わり合っていたのね」
彼女の弁に裸のままの彼、黙って頷いた。瀬戸内は今日も快晴である。
・・・・・・・ ・・・・・ ・
中田信子嬢に送ってもらった浅野青年と磯貝青年。彼らは岡山市中心部にほど近い小学校の同窓生である。磯貝青年が中学進学後、2歳下の浅野青年は家庭の事情で郊外の養護施設くすのき学園に入所したため疎遠になっていたが、奉仕活動に参加して再会し現在に至っている。浅野青年はこのところ泊り込んでいる親類宅に磯貝青年を泊めることに快諾している。
「オレら、今日は隔離病棟じゃな」
「磯貝君、それ、言いすぎちゃう?(爆笑)」
「いやあ、鬼は外、悪い虫も外、おねえさんの貞操を守ろう会ってことじゃ。ぼくらはなんだ、彼女を徴用されて男だけ隔離の罰ゲームじゃ。今頃、洋子姉は佐藤のオニイサンとイチャイチャしちょるのとちゃうかな?」
彼は従妹の大山美香嬢より洋子嬢と大勢青年の関係を聞かされており、その性癖についてもリアルに語っていた。その情報のもとは美香嬢だけとはいえ散々聞かされているだけに、浅野青年はうらやましさを感じつつも食傷気味でさえある。彼もまた、ミミドシマの恩恵とも弊害ともつかぬものを一身に受ける一人なのである。
「オレはまあいいとして、磯貝君は明日もまた、景子おねえさまと仕事しながらにしてデートってことだな。こちとらは朝から飯の準備だ。佐藤さんは遅めまでお休みみたいだから、ぼちぼちやらにゃいけん」
「そうじゃろうな。でも、あのお寺であれだけやらかしちゃったらなぁ~」
「あの中学生どもも、もうキャッキャ言えまい。あ、それでも言うかな?」
それを言うなら、翌日の泳ぎの時間ではキャッキャ言われはした。しかしながらそれまでの茶化すような言い方はされなくなった。これもまた、あの夜の焚火のおかげであろうか。なんせ彼女は、火の女神様に選ばれし人なのだから。
「まあ、景子命のハチマキにはオレもしびれたわ。あんなこと、か弱いボクチャンにはできませんよ、勘弁してくださいよ~、磯貝センパ~イ」
「誰も浅野君にやれとか言ってなかろうが。何ならクリスマスの奉仕活動でよつ葉園に行ったときには美香命のハチマキでも締めてやったらどうよ」
「風紀上よろしくないからやめろって言われるンがオチじゃ。やめとく」
少し愚痴めいたことを言い合いながら頂き物の酒を飲み、彼らは早めに寝た。明日は最終日である。早めに起きて××院に行かねばならないから。そして翌朝5時過ぎに起きた彼らは、支度をして歩いて20分くらいかけて××院に出向いた。
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