週末に向けて
第42話 男女3人 二度目の全員集合 後半
夏の夜というものは、いくら色っぽく更けても短いもの。朝5時台ともなれば空はすっかり明るい。一番体力を消耗した真ん中の人物は、横にいる女体をひそかに自らの手でまさぐるように愛撫した。だが、二人とも最大の急所のガードは固い。さして太くない二本の色っぽ気な足は、その地への異物の主の突入を拒んでいる。
熱帯夜じみた夏の夜だったが、二体のイブと一体のアダムの上には夏物の毛布が掛けられている。2歳年下の女の手は、彼の急所の伸縮自在の部分をこれだけは奪われたくないと言いたげに軽く触れている。もう一人の手は彼の急所の二つの丸いものを含んだ場所を軽く、しかしちゃっかりと握っている。目覚めかけた真ん中にいる若い男にしてみれば、悪い気はするまい。やがて、横の二人の目がほぼ同時に開いた。自分の手の先端の行方を見て、真ん中の男に微笑んだ。
「今日も昼過ぎまでコイツの争奪戦ね。こんな小娘に負けちゃたまらないわ!」
男の少し若い頃を知る女が、宣戦布告。
「負けないわよ、こんな年増女に。コイツは私のもの。若さと経験で勝負よ!」
自分の触れている物体を最初に受入れた女が返す。
「私だって、経験ならあんたみたいなお嬢様なんかに負けちゃいないわよ~!」
「年増も小娘もいいから、少し自由にさせてくれって」
「2つも年下の小娘なんかに・・・」
「同級生のどこが年増なのよ・・・」
「もういい。テメエらまとめて・・・」
目覚めた男が、順に二人の唇を冷めたキスで奪った。どちらが先かは伏せるが、たまたま目が合った相手だったとだけ申し添えておこう。
「こいつがクラスのヒロインをメチャクチャにしてくれるのね!」
「この美人女子大生をメチャにするのは、コイツだな、コイツ!」
手の先の物体を、彼女たちは少し軽く握った。2つの手の合計よりも明らかにその物体は長くなり、硬度も急激に増した。
「みんな起きたことだし、シャワー、浴びよ」
生年月日では一番早い女性が二人の大学生に声をかけた。同級生と言っても彼女は4月生れで男のほうは翌年の早生まれ。同級生とはいえ年下と言えなくもない。さらに横の女子大学生も1月の早生まれなので、交際相手の大学生とは学年どおり2歳年下ということになる。だが、そんな年の差などあまり関係ない年齢に皆達していることは言うまでもない。
「ここ、ちゃんと洗わなきゃなー!」
「キャー、定くんのヘンタイぃ~!」
「そんなところ握るな!どっちがヘンタイだ!」
「変態クンはお姉さんが洗ってあげるねぇ。ヘンタイ小娘は、し~らない!」
じゃれ合いながらシャワーを浴び、裸のまま居間に戻って外に出てもいいくらいの格好を整えた。実際は3人とも、下着を着ないまま手持ちの着替えをそのまま着ただけだが。
「まずは珈琲、飲も」
年長の女子が作りおいていたアイス珈琲を冷蔵庫から取出した。喫茶店のものほどうまいとは言えないかもしれないが、家庭の味そのものである。
「いいなぁ~。定くんはこの珈琲、毎日でも飲めるようになるもんなぁ~」
「陽子ちゃん宅(ち)は喫茶店でしょ。毎日プロの珈琲が飲めるじゃない」
「お父さんはマスターだけど、家では料理なんかしないよ。店の残り物なんかをうまいこと使って、お母さんが作ってくれる。あ、私も作るよ。いずれ定くんに毎日作ってあげられるようになれたら、いいな~」
「陽子ちゃん、それ、ノブへの宣戦布告?」
「そう。ノブちゃんなんかに負けないから」
「陽子ちゃん、他にも付合っている人いるでしょ。こんな奴よりいい男も!」
「付合っている人なら、います。ええ。だ、け、ど! 一番いいのは~、もっちろんじゃけぇど~、こ、れ!」
そう言って彼女は横にいる男性のある部分に柔らかい手を当てた。
「ノブちゃんだって、御付合いシテル人、他にもいるんじゃないの?」
「今は、いませ~ん。ちょっとそのいやらしい手、どけなさいよ~!」
「や~だも~ん」
彼女は別の場所に手を回し、横の男性の急所の一部を握った。
「ちょっと苦しいからやめてくれって」
彼は二人の手を除けて唇を順番に奪った。彼女たちはおとなしく手を引いた。朝ということもあって彼は元気を回復している。となればいつまでも彼女らが大人しく手を引いたままでいるはずがない。彼は、横にいる女性たちに手を回した。
「朝からやる気満々ねぇ~、このゼツリン男」
「二人がかりでこいつを大人しくさせようよ」
急所を握る二人を身ぐるみ剥ごうとする男に、彼女たちは抵抗するどころか互いにあおる。男は心底から湧出する喜びを隠すことなく二人の身ぐるみを剥いだ。その間にも、彼の下半身はすでに彼女たちによって身ぐるみ剥がれている。
「はい、汗かくからこれ脱いで。バンザ~イ!」
二人の女の手によって、青年の上半身もまた身ぐるみ剥がされた。
彼らは、昨日と同様に朝から元気よくお互いの身体を行き来し合った。
「ノブちゃん、今日は何が残っている?」
「冷蔵庫と台所にあるのを適当に使おうよ。この子はお疲れだから休んでもらって私らで元気の出るごはん、作ってあげようよ。どう、陽子ちゃん」
「うん、それで行こ」
朝6時前から3回も交わった後だけに、男性のほうは疲れ気味。裸のまま大の字に転がっている。料理をしている女性たちは、一応上下とも服を着ている。
「定くん、そろそろ起きて。ごはんよ」
「ノブちゃんが言うと、なんか奥さんが旦那さんを起こしているみたいね。あるいは何かなぁ、息子を起こすお母さんね。兄が子どもの頃を思い出すわ」
「そりゃあもう、今から練習しておかないと。ほら定くん、さっさと服を着て」
憧れの同級生に急かされながら、彼はさっと服を着た。
「今から練習って、ヨーコもしなきゃね」
「無駄な抵抗やめなさいよ。ノブがしっかりいただくンだから」
「ぜ~ったい、奪還するわよ。こんないい男、奪われてたまるかっての」
「はい、そこで休戦。その闘いはまた後でやってくれ」
内山青年の一声で一時休戦。3人で食事に。食後も彼らは夕方近くまで家から出ることなく、水入らずと言えるかどうかは微妙ながらも仲良くひと時を過ごした。
時計の針が16時に近くなった。再び裸になっていた3人は朝と同じようにシャワーを浴びてそれぞれの服に着替えた。今度はきちんと下着まで着用している。酒池肉林の世界はひとまず終了。3人は一般社会の顔に戻り、中田信子嬢の運転するクルマで児島市通生の××院に戻った。
この時間に戻ることを求められたのは他でもない。少女たちが海水浴に行っている時間であるから。二人が同時に帰ってくることだけでも、今来ている班の少女たちだけでなく引率の女性職員らの目に触れると不用な物議を醸しかねないからである。まして同年代の若い男女が一緒にともなれば、なおのこと。
「じゃあノブちゃん、また今度近いうちにね」
「陽子ちゃん、今度は岡山で合お。もちろん定くんも一緒に」
クルマの中で挨拶を交わし、助手席にいた陽子嬢が降りた。なぜ彼女が助手席にいたかは言うまでもなかろう。それは昨日も今日も一貫している。後部座席から今度は若い男性が下車した。お互い手を振り合って別れ、残った2人はお互い他人同士の顔に戻って本堂へと向かった。
二人はあと1日、他人として奉仕活動の職務に励まねばならない。
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