第4話 カクヨムデビュー「人をミミズクにするというのは簡単なことではない」
さて、そんな感じで創作意欲がちょっと芽生え始めていたころ。
話はがらっと変わりまして。
私はYouTubeをよく見るのですが、毎週楽しみにしているチャンネルに「有隣堂しか知らない世界」というものがあります。
関東にお住まいの方は有隣堂という本屋さんをご存知なんですよね? その本屋さんが運営しているチャンネルです。
これがまあ、面白いんですよ。見たことない方はぜひ一度見てみてください。
チャンネル登録者数は30万人に達していて、企業が運営するYouTubeチャンネルとしては破格の成功として、ニュースに取り上げられたこともあります。
チャンネルの内容は基本的に、『ブッコロー』というマスコットキャラクター相手に、毎回いろいろなゲストの方が自分の好きなものをプレゼンするという構成です。
そしてそんな「有隣堂しか知らない世界」の2023年3月7日配信分にゲストとして出演されたのが角川社員の熱田さんという方で、紹介されたのが「カクヨム」だったのです。
私はそもそも、あまり本を読む方ではありません。好きな作家の本をちょっとずつ読んでいく程度です。なので、WEB小説というのはまったく読んでいませんでした。「小説家になろう」というサイトがあることくらいは知っていましたが、その程度です。読んでみようと思ったこともありませんでした。
そしてその配信の中で、チャンネルとカクヨムのコラボ企画として「R.B.ブッコローの二次創作コンテスト」の開催が発表されたのです。そしてなんと、受賞者はチャンネルに呼ばれて出演者たちに会えるという特典付き。
これを見て私は、いっちょ書いてみるか、となったわけです。
こうして、私のカクヨム活動がスタートします。
まず、何を書いたらいいのかというのを考えます。
チャンネルで紹介されていたカクヨムの小説はラノベ系のものが多く、ブッコローの二次創作というコンテスト自体も、ブッコローが異世界転生したり世界を救ったりといった、そういう小説を意図している気がします。
しかしおっさんになった私は、長らくラノベを読んでいません。そんなもの、書ける気がしない、というか、書き方がわかりません。とはいえ、そのためにラノベを読む気にもなれません。
なので、あくまでも、普段読んでいる小説の方向性で書くことを考えます。
その頃、すでに私の好きな小説家は皆川博子様でした。
多分2015年くらいだと思うのですが、「双頭のバビロン」という本を読み、その耽美、官能、背徳でありながら、ストーリーは明快でミステリー要素もあるという作風に衝撃を受けます。それ以来、長編も短編も、皆川博子様の本を読んでいました。
そしてふと思い浮かんだのが、皆川博子様の「結ぶ」という短編です。
これがまあ、すごい小説なんですよ。初めて読んだ時は衝撃を受けました。
この小説の紹介文は次のとおりです。
「そこは縫わないでと頼んだのに、縫われてしまった──〈縫う(縫われる)〉行為を考察する語り手が、読む者を幻視の極北へと導く、類稀なる綺想の結晶ともいうべき表題作」
……いったい何を言っているのかわからないと思います。
でも、仕方ないんです。とにかく説明するのが非常に難しい小説なのです。
いや、内容を要約するのは簡単なんですが、素晴らしさを説明するのが難しい。
それでもあえて要約すると、「主人公の少女が体を縫われながらいろいろ考える話」ということになります。
……。
はい、そうですよね。ぽかんとしますよね。
もう、実際に読んでみてください。それしかありません。
とにかく私は、この「結ぶ」に着目します。
先ほどの要約をもう少し進めるとこの作品は、「作中で非現実な行為が進むのと並行して、作者のエッセイらしきものが述べられる話」という骨組みになると考えました。
そこで私は、この骨組みに、自分なりの肉付けをすることで作品にしてみようと思いついたのです。
こうして出来上がったのが、私のカクヨムデビュー作、「人をミミズクにするというのは簡単なことではない」です。
https://kakuyomu.jp/works/16817330655130968031
当時私は、この一作しか書くつもりはありませんでした。なのでペンネームの設定はせず、IDそのままで登録していました。
また、カクヨムについてもまったく理解していなかったので、カクヨム内での交流があることも知りませんでした。
そんな私に、作品公開後、予想外の出来事が起こります。
(つづく)
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