第5話 ガラスペン、万年筆、消しゴム

 さて、ようやく完成した作品を公開し、私は満足しました。

 これでコンテストへの応募は完了しました。あとは結果を待つだけです。


 ですがそんな私に、通知が届きます。

 そうです、ハートと星をいただけたのです。


 なるほど、そんなものがあるのか、と思いながら確認すると、応援メッセージまで頂けていました。そしてそのメッセージを見て、私は衝撃を受けます。

 引用させていただきます。


「興味深く読みました。文章が知的で美しいですね。泉鏡花を思い出しました」


 とても、とてもありがたいメッセージです。本当にありがとうございました。

 しかし私が衝撃を受けたのは、泉鏡花の名前が出たことです。


 泉鏡花は幻想文学の先駆として有名な小説家で、私が参考にした皆川博子様も、その流れに入ります。

 つまり、ちゃんと幻想文学が書けている、と評価していただいたわけです。これは嬉しかった。


 と同時に、すぐに泉鏡花の名前が出てくるレベルの高さにも驚きました。


 それまで、ネット小説なんてラノベしかないんだろうと舐めていた私は、利用者のレベルもみくびっていたのです(失礼)。

 しかし私も読んだことのない泉鏡花(←おい)の名前が出てきたことで、私は自分の不明を恥じます。


 おそるべし、カクヨム……!


 そして、お褒めの言葉をいただいた私はいい気分になり、もう一作書いてみようかな〜という気になったのです。


 さて、では次はなんの話にしようか。

 ちなみに、ここで私は、ある致命的なミスというか、勘違いを犯したまま、次の小説を考え始めるのですが……。


 まず、次の小説は、ガラスペンをモチーフにしようと決めました。

 ガラスペンは「有隣堂しか知らない世界」で何度か取り上げられ、チャンネルを代表するアイテムのひとつになっています。

 私はもともとペンとかインクとか万年筆とかが好きで、ガラスペンというものも、高校生の頃から知っていました。自分で所有はしていませんが、大学生の頃には、妹に誕生日プレゼントで贈ったこともあるのです。

 なにやら、この点に関して疑義を挟むレビューをいただいておりますが、私はガラスペンが好きなおっさんなのです!(笑)


 で、ガラスペンをキーアイテムに使い、皆川博子様に寄せた小説を書こうと、いろいろ考えてみます。しかし、なかなかうまく思いつきません。


 そこでふと、ある考えが浮かびます。


 私はもともと、「説明文」を書くのは得意な方です。「人をミミズクにするというのは簡単なことではない」も、説明文が主体のような作品です。

 なので今回もとりあえず、ガラスペンについての説明からスタートしてみることにしたのです。そうすればそのうち、なにか浮かぶかもしれない、ということで。


 そんなわけで、ガラスペンについての説明を書いていきます。説明文なら、するすると、特に悩むこともなく書けていきます。

 そして、少し書き進めたところで、ついに降ってきたのです!

「私はガラスペンになりたい」というフレーズが!


 ……みなさん、落ち着いてください。私は正気です!

 その時私は正気で、これだ! と確信したのです。そして、あとは一気でした。


 こうして出来上がったのが2作目、「ガラスペンになるということ」です。


https://kakuyomu.jp/works/16817330655361248961


 そして、ガラスペンについて書いたのなら、万年筆についても書けるな、と考えました。

 ガラスペンは女性をイメージして書いた。万年筆は男性で行こう……。

 ということで、3作目、「万年筆と或る男」の完成です。


https://kakuyomu.jp/works/16817330655436761952


 というわけで、このガラスペンと万年筆の二作品は、プロットも何もなく、思いつくままを書いて完成した作品です。

 うまく言えませんが、一生に一度しか書けない作品だと思います。

 そういう意味で、今でも自分にとって特別な作品になっています。


 そしてさらに、今度はちゃんとプロットを考え、4作目を書きます。消しゴムをモチーフにした「消える私、消えた恋」です。


https://kakuyomu.jp/works/16817330655547728779


 面白さやインパクトはそれまでの三作に劣るかもしれませんが、私にとって、初めてきちんとプロットを考え、プロット通りに書いた作品です。なので、本当の意味で以後の創作の原点というか、記念碑的な作品だと思っています。


 ところで、このあたりでようやく私も本格的にカクヨムを利用していくつもりになり、ペンネームを考えることにします。


 そう、ミナガワハルカ、誕生の瞬間です。


 このペンネーム、「皆川博子様にはるかに及ばない」いうのが由来です。

 私の創作の目標は、皆川博子様のような作品を書くことだからです。


 そして実はこれ、司馬遼太郎様の命名方法を拝借したんですよね。

 司馬遼太郎様のペンネームは、「司馬遷※にはるかに及ばない」という意味だ、という話を聞いたことがありまして。そうだ、これだ、と。


(※司馬遷……中国の漢の時代の人。歴史書「史記」を書いた)


 え?

 でも、それなら皆川遼太郎でよかったのではないかって?

 遼太郎でなくても、皆川遼とかでもよかったんじゃないかって?


 実はですね、応援コメントで泉鏡花の名前を出していただいたことで、ふと思ったんです。

 皆様、泉鏡花って男性だと思います? 女性だと思います?

 答えは男性なのですが、私は最初、女性だと思ってました。

「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作品「岸辺露伴は動かない」では、「泉京香」という女性キャラも出てきます。


 そう、泉鏡花って女性っぽい名前なんですよね。


 これや! と思いました。


 せっかく泉鏡花を連想してもらったのだから、そんなペンネームにしよう! と思ったのです。


 つまり、女性にも男性にもとれる……というか、女性と間違えられる可能性の高いペンネームに!

 うんうん。幻想文学を書いていくにあたって、女性にも男性にもとれるペンネームって、おしゃれやん!


 ついでに、ちょうどガラスペンをモチーフにした作品を出して褒めていただいていてる時だったので、カタカナにすることでガラスペンの様な透明感も出したろ! なんて思いまして。


 ということで、なんか、私のことを女性だと思ってたことについて、複数の方から、すみません、というようなコメントをいただいているのですが、……いえいえ、こちらこそ申し訳ございませんでした。

 狙ってやったのです。



 ああっ、やめてっ、石を投げないで!

 すみません、すみませんでした!


(次回エンディングです)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る