第87話

……私は、なんて答えるのが正解なの?




諦めます?


───まだ、こんなに好きなのに?


ライバル同士だけど仲良くしましょう?


───ライバルにさえもなりきれてないのに?






……一つだけ確かな事は、私が二人の仲の邪魔をしているという事だけ。



虚しさが胸いっぱいに広がって、泣きたくなった。



なんて答えたらいいのか分からなくて、言葉に詰まっていると、ちょうどタイミングよく私の携帯の着信音が鳴り響いた。


「すみませんっ」と、慌てて電話に出る素振りをしながら、内心ホッとする。


誰でもいい。


この状況を打開させてくれた着信の相手に、心底感謝したい。



「あ、はいっ、桜木です。」


『あー帰宅後に悪い、桜木。九条だ。』



九条課長の声に、なんだか妙にホッとさせられて、涙が出そうになった。



きっと私の中で、お寺での出来事は夢の中のような感覚で、翡翠様がいない会社が私にとったら現実で。



だからなのか、九条課長の声に現実に引き戻されたような感覚がして、ホッとしたのかもしれない。

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