第85話
ふと視線を感じて顔を上げると、瞳を揺らすように真剣な表情で私を見る楓さんと目が合った。
「…だけど、私が留学する直前、彼のお姉さんである紅葉さんに聞いたんです。『楓ちゃんを留学させたいが為に、あの子はあんなバカな女遊びを繰り返してるのよ。だから途中で帰ってきたりしちゃダメよ』って。」
……ああ。これは、参った。
翡翠様にお姉さんがいる事は知っていたけれど、遠くに嫁いでいるとかで会った事はない。
でも、そのお姉さんが言ったのであれば、事実な訳で。
きっと、そのまま翡翠様と結婚して寺の嫁になってしまえば、彼女の夢や、やりたい事をさせてあげられなくなる。
だから翡翠様は、彼女の方から自分の元を離れていくように仕掛けたんだ。
……翡翠様が、どれだけ楓さんの事を想っていたのかを思い知らされる。
───同時に、彼女の決意も。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます