第84話

……しかも楓さん、私と同い年だったんだ。


それも、なんだか妙にショックだ。

楓さんはこんなに可愛らしくて若々しいのに、私は翡翠様の前では頑張ってるとはいえ、なんだかくたびれたOLのようで、全てにおいての敗北感が私を更にドン底に突き落としていく。



「でも何故か、彼にドンドン惹かれていく自分がいて。」



そう言って、彼女は私を見てハニカムように笑った。



「大学に行っても、ひー君の女性関係の派手さは治らなくって、私は彼に惹かれてた分、無理だと思って婚約解消をお願いしたんです。元々、大学は海外留学したいと思っていたので、吹っ切る為にもちょうどいいかなって思って。」



……聞きたくもない事が、ドンドン耳に入ってくる。




なんだ……翡翠様、実は両想いだったんじゃん。




溜息を吐きたい気分をグッと堪えて、少しだけ視線を俯かせた。


彼女の春らしい可愛いワンピースの裾が目に映る。




……こんなに誰かが羨ましいと思ったのは、初めてかもしれない。

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