第79話

「あ!住職様っ!」



声の主は、翡翠様のお父様でもある、現住職様だった。



「すみません、騒いでしまって…」



私が急いで翡翠様から離れて頭をペコペコ下げていると、住職様はニコニコ笑顔で「良い良い。」と微笑んだ。


どことなく翡翠様にやっぱり似ている住職様は、若い頃さぞかしイケメンだったんだろうな、というような風貌だ。



「住職、私に何か用事ですか?」


「ああ、ちと頼みたい事があっての。」



何となく席を外した方がいいな、と思った私は、急いで二人に頭を下げて庫裏の方へと向かった。


住職様は穏やかだけれど、存在感が半端なくて、やっぱりお寺の顔って感じがする。


イベントで手伝いをしている時に、たまに会って話すぐらいだけれど、いつも笑顔で私の事を快くお寺に招き入れてくれる。


翡翠様のお母様は、あまり話に聞かないし、見た事ないなぁと思っていたら、玉瑛君の話だと翡翠様が大学生の頃に亡くなってしまったらしい。



あまり自分の事を話さない翡翠様だから、根掘り葉掘り聞くなんてした事はないけれど、住職様の妻であるお母様の御逝去後は、色々相当大変だったみたいだ。


それだけお寺の嫁の役割はデカイって事だって、前に秋明さんが教えてくれた。

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