第78話

あれから数日、私は企画が始動するまでの間、お寺に通い続けた。


企画の取り組みが始まったら、平日は疎か、土日の法話や写経にさえも参加出来なくなる可能性がある。


多分私の事だから、土日は身体を這ってでも行くような気はするのだけど。







「翡翠様翡翠様翡翠様ーっ!!」


「…境内ではお静かに。」



箒で境内の掃除をしていた翡翠様に、元気よく頭を下げてズイっと近付いた。



「翡翠様と私の出会いって、やっぱり運命と言う名の縁だと思うんですけど、どう思いますか!?」



キラキラと目を輝かせて翡翠様を見る私を、彼は笑顔で遠ざける。



「腐れ縁というものをご存知ですか?」


「腐れ縁って、あの幼馴染とかの恋愛でよく言うあれですよね!?」


「違います。」



ニッコリと微笑んで、翡翠様は掃除を再開する。


「でもですね!」と翡翠様の法衣の裾を掴む私に、笑顔で振りほどこうとする翡翠様を、



「ほっほ。小春殿は元気だのぉ。」



と、穏やかな声が遮った。

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