第75話

一瞬ドキッと心臓が跳ねる。


いつもであればなんてことない行為でも、意識してしまうと妙に恥ずかしくて、じわりと耳が熱くなる。



……そう言えば、九条課長は私の頭をよく撫でてくれる気がする。


他の女性社員に対しては、とびきりの笑顔で褒めたり御礼を言っているけれど、……頭を撫でてくれるのは、



私、だけかも……?



そう思うと、なんだか変にソワソワしてしまって、慌てて他部署に用事があると行って、その場から抜け出した。




……これは、困った。


ドキドキと少し嬉しいと思う反面、今の自分には翡翠様の事しか頭にないから、私の勘違いであって欲しいと祈る自分もいて。



何にしろ、今日は翡翠様に会いに行こう。



自分のほんの少しの浮ついた心も妙に許せなくて、頭の中を翡翠様の事でいっぱいにしたいと思った。

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