第69話

「……翡翠様。私の気持ちに応えられないのは、分かりました。けど、どうか………避けるのだけは、止めてもらえますか…?」



翡翠様に気持ちを受け入れてもらえないのは、今に始まった事じゃない。


翡翠様の結婚も、いつかは訪れる出来事だったのかもしれない。



──でも、



翡翠様に避けられるのだけは、やっぱりどうしても嫌だ。


会話さえも出来なくなるのは、どうしても嫌だ。


今にも潰れてしまいそうな心に、歯をグイッと食いしばり、涙を堪える。


ふと、空気が柔らかくなった気がして顔を上げると、翡翠様が穏やかに微笑んでいた。





「…あなたには負けました。」





その微笑みに、私がどれだけホッとしたか、きっと翡翠様は知らない。


でも、どういう状態にしろ、翡翠様に会えなくなるのだけは避けたかった。


だから私も、泣きたい気持ちをぐっと堪えて微笑んだ。



「ありがとうございます。」

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