第62話

………あ。



私が視線の先に捉えたのは、優しげに微笑む翡翠様と、



少し小柄な女の人。




時々お寺で見かける風景と同じ筈なのに、何故か胸がザワザワと騒ぐ。


それに、これはいつもの相談者である女性とは違う、と私の本能が何故か鋭く察知してしまって。



ドクン――



と、心臓が嫌な跳ね方をして、私から表情を無くしていく。


…だって、遠目に見ても分かる。





翡翠様が、とても嬉しそうで


普段の穏やかな笑みとはどこか違うという事が――。




ドクドクドク、と私の心臓が嫌な音を立てて騒ぎ始める。


なんとも言い様のない気持ちに襲われながら、翡翠様の隣で微笑む彼女を見る。



小柄で、肩口で切り揃えられた黒髪がとても似合っていて、立ち姿もすごく綺麗な人だ。


それでいて、翡翠様を見上げて笑う笑顔がとても可愛くて、年齢的にいったら、多分私より年下に見える。


でも服装の所為か、どこか落ち着いているようにも見えて、造作の一つ一つが上品で、自然と目を奪われる。



とにかく一言で言えば、




――清廉。




彼女は、そんな感じの人だ。

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