第57話
「お、おはようございます。」
ふー、危ない危ない。
気を抜くとついニヤけそうになる頬を引き締めつつ、課長の方を見て挨拶を返した。
「課長がこんな時間に出勤なんて珍しいですね?」
「いや、俺はいつもと変わらないが?桜木が珍しく早いんだろう?」
そう言われて、ハッと腕時計に目を通して驚いた。
いつもの時間より、一時間も早く出勤してしまった。
翡翠様のキス一つでここまで舞い上がる私って。
しかも、翡翠様にとったら、魔が差した出来事なのに。
自分のアホっぷりに苦笑いが漏れた。
「…それにしてもお前、凄いな。その目の下のクマ。何かあったのか?」
心配気に九条課長が私の顔を覗いてくる。
うん、やっぱだよね。私も酷いと思ってた。
曖昧に笑ってDVDを観ていたので、と誤魔化した。
「睡眠はしっかりとってくれよ?例のお前の企画、なんとか通りそうなんだ。俺が一応プロジェクトリーダーって事にはなるが、実質企画はお前の案だからな。お前が指揮を取る形になる。」
そう言われて、少し眠気でぼんやりしていた頭が一気に冴える。
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