第53話

「…すみません。私は正直、あなたは恋愛にしか興味の無い、新米社会人なのだと思ってました。」



「へ?」と、少し間抜けな顔で翡翠様を見上げると、少し申し訳なさそうに眉尻を下げた翡翠様と目が合う。



「だから昨日は、あなたがその若さで役職に就いている事に正直驚きました。私こそ、『半眼』の教えを欠いていますね。申し訳ない。」



そう言って頭を下げる翡翠様に、私は慌てて首を振った。



「そ、そんなっ!!私は逆に、そう思って欲しかったんですから、謝る必要なんて無いですよ!!…まぁ、残念ながら新米では無いですけどね。」



私が自嘲気味に笑うと、翡翠様が顔を上げてふわりと微笑んだ。


その笑顔にドキリと心臓が飛び跳ねる。


妙にドキドキとなんだか恥ずかしくて、視線を逸らして呟いた。



「そ、それに、私は翡翠様に引かれたんじゃないかって、落ち込んでたぐらいなんで…」



そう呟く私の顔を翡翠様は少し覗くように見て、優しく微笑んで頭を撫でてくれた。

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