第51話

え、玉瑛君がここまで顔に出すなんて珍しい。


一体何を言われるんだろうと、ドキドキと秋明さんを見ていると、



「私に、何か御用だったのではないですか?」



と、後ろから翡翠様の声が聞こえてきて、ついビクリと肩が揺れてしまった。



「あ、ひ、翡翠様…!」



なんとなく秋明さんが話そうとしていた内容が、翡翠様に知られたらいけない事のような気がして、苦笑いしてしまう。



「小春ちゃん、また今度な。」



そう言って、私の頭をポンポンと撫でた秋明さんの言葉に、あ、やっぱり。なんて思う。


やっぱり、翡翠様がいたら話しにくい内容なんだ。


どこかホッとしたような表情で、玉瑛君も私と翡翠様に頭を下げて秋明さんの後を追っていく。


うわああぁっ、何!?何!?

すごい気になるんですけどっ!!


秋明さんを追いかけて聞き出したい、と思う気持ちをなんとか押し込めて、隣に立つ翡翠様を見上げる。



……本当、背が高くて整った綺麗な顔は、相変わらず完璧だ。



私の視線に気付いた翡翠様が、穏やかに目を細めて本堂の方を指差した。



「場所を、変えましょうか?」

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