第46話

「お釈迦様は若者の話しを黙って聞きました。そして尋ねられたのです。“あなたは誰かに送り物をする事がありますか?”と。若者は答えます“あるとも”と。」



九条課長も、藤森も黙って聞き入ってる。

翡翠様の法話の結末が予想出来なくて、つい私まで聞き入ってしまった。



「お釈迦様は更に尋ねます。“人に送った物を受け取ってもらえなかった場合、あなたはどうしますか?”と。すると若者は当然と言わんばかりに答えます。“そんなもの、自分の物にするさ”と。その時、若者はハッとしてすぐにお釈迦様に謝ったそうです。」



そう言って、翡翠様は幸希に穏やかに尋ねた。



「何故だか、分かりますか?」



そう問われた幸希は、訝しげな顔で、「さぁ?」と答えると、翡翠様は穏やかに微笑んだ。




「人に与えた物は返ってくる、という教えなのですよ。」




そう言われて、幸希が少し目を瞠った。



「自分が人にした事は、いずれ自分に返ってくるのです。用心して下さいね。」



そう言われ、周りにヒソヒソと囁かれて、幸希の顔がジワリと赤くなる。

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