第45話

「大貫さん、少しだけ待ってもらえますか?」



そう翡翠様は中年男性に穏やかに伝えると、すぐ側の幸希へと視線を戻した。



「短い法話を一つ、宜しいですか?」



幸希に向かって、穏やかに尋ねた翡翠様に幸希は勿論、私も驚いた。



「は、はぁ…?」



急な出来事に、呆気にとられたように幸希がポカンとしていると、「ありがとうございます。」と、翡翠様は穏やかに微笑む。



「これは、お釈迦様とある若者のお話です。当時のお釈迦様には沢山のお弟子さんや、崇拝者がおられました。ですがそれを面白く思わない一人の若者が、お釈迦様に対して悪口を言いました。」



翡翠様の法話を聞こうと、若い女性が周りにイソイソと集まってくる。


幸希も少し眉間にシワを寄せながらも、周りの目が気になったらしく、黙って聞いている。


翡翠様は何を話すつもりなんだろう?と、私もドキドキしながら二人を眺めた。

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