第39話

───…あ。



会場の後方入り口から、丁度翡翠様が出てきたところで、バッチリ目が合ってしまった。



ううわっ!!


ヤバいっ、今、思いっきり目が合った…!



物凄い速さで前を向き、急いでここから出なければ!と、課長と藤森の背を必死に押す。



「か、課長!藤森も!早くお昼行きませんか!?この人だかりだと混みますよ!」



そう早口で捲し立てるも、私の必死さが伝わらないのか、藤森が呑気に私の後方を覗くように振り向く。



「えー、でも、ほら。係長も見てくださいよ!後ろ、凄いイケメンなお坊さんが…」



そう言って、藤森が立ち止まるものだから、九条課長まで「ほう?」と、立ち止まって振り向いた。


あーっもうっ!!コイツら置いて、先に出るしかない!



願わくば、翡翠様がこっちに来ませんように!


なんて祈りながら、慌てて私が藤森の横を通り抜けようとした瞬間。





「小春さん?」




と、穏やかな声で名前を呼ばれて、ギクリ、とその場に固まってしまった。

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