第37話

私が藤森の手を振り解いていると、さらにロビーに人が溢れかえった。



「ってか凄い人ッスね?しかも若い女の子が多い!」



藤森がニヤニヤ嬉しそうに周りを見回して呟いた。


…確かに。

セミナーなんて、オッさんばっかりだったのになー。なんて思って私も周りを見ていると、九条課長が表の看板を指した。



「多分、アレじゃないか?外の看板に書いてあった、お坊さんの講演会。」


「えぇ!?お坊さんの講演会に何で若い子が来るんスか!?じぃちゃんばぁちゃんなら分かりますけど!」



藤森の喚き声を聞いて、まさか!と、心臓がバクバク鳴り出した。


確か、この間翡翠様と会った時も、講演会に呼ばれたと言っていたけれど。でも。まさか。


そう思いつつも、


周りの若い女の子を見て、確信する。






───ここに、翡翠様が来ているっ!!






そう思うだけで、一気に心拍数がグングン上がる。



うわーうわーっ

嬉しいし、会いたいっ!!




けど、ここには藤森も九条課長もいる訳で……

さすがに、今この場で素の私を曝け出すには、勇気がいる。


別にどう思われたって、知ったこっちゃ無い!

…とも思うけれど、やっぱり、特に藤森の上司としては何だか仕事がやりにくくなる気がして、翡翠様を探しに行きたい気持ちを足止めされる。

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