第36話

「お。桜木、藤森。お前らも今終わったのか?」



人混みの中、一際背が高くて顔の整った人が、声を掛けながら私達に近付いて来る。



「九条課長!課長も来てたんスか~?」



藤森が若干嬉しそうに九条課長に寄って行くのを見て、まるで子守をした後の様に、ドッと疲れに襲われる。


九条課長は、同姓異性問わず人気のある人だ。


藤森のお尻に犬の尻尾でも生えているように見えて、つい笑ってしまった。



「ああ。まぁ俺は、隣の営業企画のセミナーだったけどな。」



九条課長がそう言うと、「俺もそっちが良かったっスよ~」なんて藤森が言うので、イラッとしてお尻を後ろから蹴り飛ばした。



「イテッ!?」


「アンタは帰ったら、今日のセミナーの議事録急いで提出しなさいよ?」


「ええっ!?マジっスか!?俺半分以上寝てたんスけどっ!」


「はぁ!?なんの為に連れてきたと思ってんのよ!?」



九条課長も、「お前が悪い」と笑いながら藤森に言うと、藤森が私の腕に泣き真似しながら縋ってきた。


本当っ、調子いいんだからっ!!

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