4.バレたくない事がバレました。

第35話

************************



「藤森、少しは頭に詰め込んだでしょうね?」



セミナーが終わって、会場から出たところで大きなあくびをする藤森を横目で睨む。


私だってあくびどころか、睡眠不足で目眩がするというのに、誰のせいで尻拭いさせられてると思ってるんだ、と藤森についイラっとしてしまう。


あの日、翡翠様に会ってから、何かと仕事が立て込んでいた為、帰りが遅かったので翡翠様には一度も会えていない。


それもきっと、疲れが取れない原因の一つかもしれない。なんて溜息を吐くと、藤森が隣で肩を竦めて首を振った。



「いや、正直無理っス。俺、商品企画なんで経営企画は難しすぎて無理です。」



それを聞いて私の方が項垂れてしまった。



「…はぁ。アンタそんなんだから、まだ企画が一つも通らないのよ。私達商品企画部は、経営陣を納得させるのも仕事の一つなんだから、アイデアを生み出すだけじゃダメなのよ?」



私が溜息を漏らしつつ、藤森に説教をしていると、同じ建物の他の会場で講演会か何かあったのか、沢山の人がロビーへと雪崩れ込んできた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る