第33話
…翡翠様に好きになってもらえるのは、どんな気分なんだろう。
どんなに望んでも、今の私では手に入らないもので。
だからこそ余計に、翡翠様に想われていた『彼女』が羨ましくて堪らない。
それは、
今もかもしれない――、と思うと尚更。
「翡翠様…、」
そう、私が話しかけようとした瞬間、携帯の機械音が鳴り響いて、一瞬ビクリと肩が上がってしまった。
言わずもがな着信は私の携帯で、慌てて翡翠様に一言断ってからスマホをスライドさせる。
着信は、会社からだ。
「はい、桜木です。」
『あー桜木、俺だ、九条だ。休憩中悪いな。午後の企画会議が一時間早まったんだ。至急会社まで戻ってきて欲しいんだが、大丈夫か?』
「え!?そうなんですか!?すぐ戻ります!」
慌てて電話を切って、翡翠様に頭を下げた。
「すみません、翡翠様っ。私急用で!お話聞けて、嬉しかったです!ありがとうございましたっ!」
「いえ、では道中お気を付けて。」
「はい!翡翠様も!」
そう言ってもう一度翡翠様に頭を下げて、後ろ髪引かれながら立ち去ろうと翡翠様に背を向けた瞬間––––。
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