第31話

翡翠様が私から視線を外して、公園の桜の樹を見上げて呟く。



「振られてしまったのですよ。」



そう呟いた翡翠様の声を聞いて、思わず目を見開いてしまった。



え、え!?


翡翠様を、振る!?


そんな芸当出来る女の人が、この世にいるの!?


さっきまでは軽いと思われた嫉妬が、びっくりするぐらいメラメラと膨れ上がる。



……私は、何度告白しても、受け入れてもらえないのに。



翡翠様はどう見ても、私が生きてきて知り合った男の人の中で、断トツで最高にイイ男だと思うのに。


翡翠様を振った女性は、それよりももっとイイ男を見つけたとでも言うのだろうか?


でも同時に、彼女が翡翠様を振ってくれたからこそ、今こうしてアタック出来る自分がいる訳で。


なんだか複雑な心境に眉を顰めると、妙に今の自分の心境と翡翠様が重なって不安になった。



翡翠様はもしかして、



その彼女が忘れられなくて、誰とも付き合おうとしないの……?

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