第19話

「翡翠様っ!!」



温和な雰囲気はいつもと変わりないのに、何となく言葉に棘があるように感じて、少し驚いた。


機嫌の悪い翡翠様なんて、初めて見た。

翡翠様もイライラする事あるんだなぁ、なんて思ったけれど、そりゃそうだ。お坊様だって人間だもん、イライラする事だって、当然あるよね。



とは言っても、穏やかな雰囲気を崩しはしない翡翠様は、流石だ。



「珍しいですねぇ、副住職が不機嫌とは。」



うぉっ、直球!


ビックリして秋明さんを見ると、さっきよりもニヤニヤ度が増しているように見える。


あああああ、でもやっぱり、イケメンに絡んでるヤクザに見える、ヤクザに見えるよぉぉぉ!



「そうですか?私もまだまだ修行が足りませんね。精進致します。」



そう言って笑顔で返す翡翠様は、穏やかだ。穏やかだけど、怖いと思うのは、き、気のせいだろうか。



「クククッ、じゃあワシはお先に失礼しますよ。」



そう言って私の横を通り過ぎた秋明さんは、物凄く楽しそうだ。


…あれは、警察も職務質問したくなるよね、うん。

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