回廊を少し進むと庫裏がある。

庫裏とは、いわゆるお坊さん達の居住する場所だ。

ここの入り口で待ってれば、翡翠様に会えるはず。

お忙しい方なので、あまり長くは引き止められないけれど、少しだったら話をしてもらえる。

毎回法話の後ここで翡翠様を捕まえて、仏教の教えについて質問したりする。この時間が、私は楽しみで仕方ないのだ。

今日は朝からの法話だったし、話す時間ないかもなぁ、なんて思っていると、

「あれー？小春ちゃん？」

と、いかにも『ヤクザ』っぽい風貌の男に声をかけられた。

「しゅ、秋明(シュウメイ)さんっ！」

思わずビクついた私に、秋明さんがクッと笑った。

「小春ちゃ〜ん、毎回ワシの顔見てビクつくのそろそろやめてくんない？結構落ち込むんだよね、それ。」

そう言いながらも秋明さんはニコニコ笑っている。

…笑っているのに、すみませんっ！って頭を下げたくなるのは何故だろう…。

秋明さんは、ヤクザではなくこのお寺に勤める寺務の僧侶だ。お寺は大概、寺務もお坊さんが勤めているのだ。

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