第12話

「小春さん、そろそろ講堂に向かわれた方がいいのではないですか?法話が始まりますよ。」



そう言って、玉瑛君が雑巾をバケツの上で絞った。


ああっ…!そうだった!!

私はこの為だけに仕事が休みの今日、早起きしたんだったっ!!



「玉瑛君、お掃除中にごめんねっ!話聞いてくれてありがとうっ!!」



玉瑛君に軽く手を振って、講堂へと走る。


法話とは、お坊さんや仏教に携わる方々が、仏教の教えに基づいた話を、一般の私達にも分かりやすく説き聞かせる事なのだけれど、やっぱりお坊さんにも話の上手い下手はあって。


翡翠様は確実に上手い部類に入る人だ。


仏教になんら興味の無かった私でさえ、あーなるほどなぁ、と感心させられる事がしばしばある。


いつもは昼過ぎに行われる法話だけど、今日は午後から翡翠様が出掛けるらしく急遽朝になったのだ。


それでも、この集まった人の数の多さに小さく溜息が漏れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る