第88話

七瀬が物凄く驚いた表情でその人を見た。



「薫!?なんでこんなとこに!?」



薫、と呼ばれた男の人は、意外そうに私の事を見ながらクスクス笑った。



「ここ、友達が経営してる店だからさ。ってか、コレ、どういう組み合わせ?」



私達三人を見回して、薫さんは首を傾げて微笑んだ。


七瀬の焦りようと、薫さんの口ぶりから、七瀬の実態を知っている人なのは明らかで、もしかしたら、七瀬の『元カレ』とかなのかもしれない。


七瀬が勢いよくガタッと立ち上がって、薫さんの腕を掴んで「ちょっと、コッチ!」と、言って連れ立って奥の方へと行ってしまった。


その様子をポカンと見つめる私に、文也が「知り合い?」と聞いてきたので、首を振った。


そういえば私、七瀬の彼氏が高学歴高収入のエリート達であるのは聞いた事があったけど、実際会ったことはなかった。


やっぱり、類は友を呼ぶって言うけど、本当だ。

文也もカッコいい部類に入る人だと思うけれど、七瀬クラスのイケメンに出会ったのは久々だ。

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